◇保有株は配当利回り、ROE重視
加谷珪一(経済評論家)
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は今年7月、情報開示の一環として保有する株式・債券の全銘柄(2015年3月末時点)を初めて公表した。株式の運用比率が引き上げられたことで、今やGPIFは日本株最大の買い手となっており、GPIFの売買動向は日本の株価を大きく左右する。GPIFの株式の保有銘柄を分析すると、時価総額に沿った保有ばかりでなく、配当利回りやROE(株主資本利益率)などを重視して銘柄選定していることがうかがえる。
日本の公的年金は、受給者に支払う年金の額が加入者から徴収する保険料を大きく上回っており、国庫からの補填(ほてん)を加えても年間数兆円の赤字となっている。このまま何もしなければ、年金の積立金はあと数十年で底をついてしまう計算である。安倍晋三政権は、こうした年金財政の逼迫(ひっぱく)という切実な事情に加え、株価対策の思惑もあって、それまでの国債を中心とした安定運用から、株式中心のリスク運用に方針を大転換した。
14年秋に取りまとめられた新しい運用方針では、基本ポートフォリオ(資産構成割合)で、国内株・外国株の比率を12%から25%にそれぞれ引き上げ、外国債券も11%から15%に引き上げた一方、国内債券の比率は60%から35%へ引き下げた。14年3月末時点におけるGPIFの運用資産総額は127兆円だったので、引き上げた分を単純計算すると、国内の株式市場へ新たに16・5兆円の資金が流れ込むことになる。この額は、国内株式市場の時価総額575兆円の2・9%にも相当する。
実際、GPIFは新しい運用方針に沿って資産配分の見直しを行い、株式へのシフトを進めている。15年3月末時点では、国内株の比率は22・00%、外国株の比率は20・89%となる一方、国内債券の比率は39・39%に低下している。当時は個別銘柄までは分からなかったが、今回の公表によって具体的にどの銘柄を買っているのかが明らかになった。
具体的にGPIFが15年3月末時点で保有する株式の銘柄を見ていこう。