◇メーカー増産でも需要減のエコカー
◇成長鈍化で輸出に頼るスマホ市場
湯浅健司
(日本経済研究センター中国研究室長兼主任研究員)
鉄鋼や石炭などの過剰生産を海外から厳しく指摘され、中国政府は生産能力の削減目標を定め、企業の設備廃棄に取り組む姿勢を見せる。しかし、懸念は鋼材や石炭だけではない。新たな問題として浮上しつつあるのが、昨年来、ブームとなっているエコカーである。
中国政府は電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の二つを「新エネルギー車」と定義している。2012年のEVとPHVの販売台数はわずか1万3000台弱だったが、新車販売全体の伸び率は低下したにもかかわらず、14年は7万4000台、15年は33万台と急速に拡大した(図)。15年のEVとPHVの世界全体の販売台数は約50万台で、中国はその半分以上を占めたことになる。
販売台数の爆発的な増加の理由は、政府によるメーカーへの補助金政策にある。13年9月に、中央政府が初めて本格的な購入補助金制度を規定し、EVとPHVの2種類を補助金の対象とした。最新の規定によると、EVの16年の補助金は航続距離によって1台当たり2・5万~5・5万元(37・5万~82・5万円)。これに地方政府の補助金が加わると、メーカーは1台販売するごとに100万円を超える補助金を得られるケースもある。
◇不正受給が横行
一見すると、エコカーは中国市場で定着しつつあるようだが、ここに来て、早くもブームに陰りが見え始めている。中国汽車工業協会によると、今年1~6月の販売台数は約17万台。昨年1年間のほぼ半分の水準にとどまった。同協会は年初に「16年のエコカー販売台数は70万台」と予測したのだが、現状では昨年を上回るのがやっと、というペースだ。……
(『週刊エコノミスト』2016年9月13日号<9月5日発売>22~23ページより転載)