◇2016年実就職率
◇トップは福井大学
安田賢治
(大学通信情報調査・編集部ゼネラルマネージャー)
今年の就職状況も売り手市場が続いてる。これは昨年の卒業生から始まった。大手283社で採用人数を集計したところ、昨年の約5万5000人から約5万8000人と約5%増えた。ほんの数年前まで企業は厳選採用だったが、今は学生が企業を厳選する時代になりつつある。
◇オワハラ問題
一方で、逆風となったのが就活スケジュールの変更だ。経団連の「採用選考に関する指針」によって、今年卒業した学生の就活は、採用に関する広報解禁が前年の3年生の12月から3月に、面接などの選考は前年の4年生の4月から8月に後ろ倒しになった。就活による授業欠席などがないよう、できるだけ学業に影響しないように配慮された。
ところが、来年卒業する学生の選考開始は8月から6月に前倒しされた。たった1年での変更だ。今年の卒業生の就活が大混乱したためだ。
今年、卒業した学生にとってスケジュール変更で昨年までのデータが使えず、手探りの就活で苦労もひとしおだった。しかも就活開始から選考まで5カ月もある長丁場だ。この苦労は企業側も同じだった。
このため、インターンシップ(就業体験)が採用活動の一つの手段となった。就活が始まる前、3年生の夏や冬に学生はインターンシップに参加する。インターンシップは、本来、社会に出て働くことはどういうことかを学ぶためのものだが、それが希望する企業や職種選びに活用された。1日だけのインターンシップも行われた。企業はこれと思った学生に、その後アプローチしていく。就活も大きく変わってきている。今年の就活では、インターンシップはもはや実施が当たり前になってきた。
オワハラ(就活終われハラスメント)も問題になった。企業は内定を出しても入社意志がないのなら、採用のための次の手が打てるのに学生が入社意志を保留するため、企業側の早く態度を決めてほしいという焦りから起こった。就活に詳しい専門家は「大手、準大手、中堅、中小の順に内定を出していたのが、一斉に出すようになりオワハラが起きた可能性がある」と言う。
◇教職員一丸の支援
そんな就活を乗り越えた結果の大学別実就職率ランキングを見ていこう。
一般的に就職率というのは、就職者数を就職希望者で割って算出したもの。政府の統計でも、この就職率を使っている。しかし、これだと就職希望者が卒業者数よりはるかに少ないなど、実態を反映していないケースが出てくる。ここでは実就職率として「就職者数÷(卒業者数-大学院進学者数)×100」で算出したデータを使った。
今年の卒業生の平均実就職率は86・5%で、前年を2・1ポイント上回り、6年連続のアップとなった。その中で、卒業者数1000人以上、中規模より大きい大学のランキングが表だ。
トップには福井大が2年ぶりに返り咲いた。実就職率は96・8%。国公立大では8年連続のトップだ。……
(『週刊エコノミスト』2016年9月13日号<9月5日発売>72~77ページより転載)