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【新連載】日本人に見えなかった中東の真実① 2016年9月13日号

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◇なぜ、パレスチナでは紛争が絶えないのか?

◇はじまりは、100年前の英国の「三枚舌外交」

 

福富満久

(一橋大学教授)

 

 2016年5月16日、英国とフランスが交わした中東分割の密約「サイクス・ピコ協定」が結ばれてから100年が過ぎた。
 この密約の一方で、英国はイスラム教徒とユダヤ教徒のそれぞれに、中東での領土を約束した。この英国の「三枚舌外交」が、その後100年にわたって中東に戦火をまき散らすことになると誰が予測できただろうか。

 

◇3宗教の聖都

 

 パレスチナに接する、イスラエルのエルサレム。ここは、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の三つの宗教の聖都だ。
 エルサレムのいわれは、ヘブライ語で平和の町を意味する「イール・シャライーム」である。中心に位置する旧市街は、周囲が深い谷になっており、難攻不落の要塞(ようさい)を思わせる。
 紀元前1020年に興った最古のユダヤ人国家、古代イスラエルのダビデ王は、このエルサレムを聖地として、息子ソロモンに王位を継いだ。だが、その後、バビロニア(現在のイラク)に攻め込まれ、人々は捕虜としてこの土地から連れだされてしまった。
 イスラム教徒にとっては、預言者ムハンマドが亡くなった際に、翼のある天馬で昇天した地が、エルサレムといわれている。キリスト教徒にとっては、イエスが生誕した地だ。
 更に、エルサレムは、アフリカ、アジア、欧州を結ぶ文化都市であり、商業の集積地でもあった。
 一方、パレスチナは、古代イスラエルの敵として聖書にも登場するペリシテ人の土地という意味で、そこに住むアラブ人のことをパレスチナ人と呼ぶ。彼らはユダヤ人国家の再建を目指す運動のシオニズムにより、ユダヤ人がパレスチナにやってくる前から、そこ住んでいた。パレスチナ人とユダヤ人は、このパレスチナの土地を巡って、半世紀以上戦争を続けてきた。
 イスラエルを含むパレスチナの面積は、2万1500平方キロメートルである。そのうち、現在パレスチナ人がかろうじて死守している土地は、ヨルダン川西岸地区の5673平方キロメートルとガザ地区の360平方キロメートル。東京都と埼玉県を合わせたほどしかない。
 15年7月時点の人口は、イスラエルに住むユダヤ人が805万人、パレスチナ人が西岸地区とガザ地区を合わせて466万人である。

 

◇日露戦争に触発

 

 これまでパレスチナは、さまざまな国に支配されてきた。第一次世界大戦の直前に支配していたのは、オスマン・トルコ帝国だった。……

 

(『週刊エコノミスト』2016年9月13日号<9月5日発売>70~71ページより転載)


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