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【特集:家は中古が一番】これだけは気をつけろ!その1 管理組合

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目を皿にして観察すべし
目を皿にして観察すべし

◇マンションの資産価値を左右

◇品質と保全を見抜くモノサシ

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)

 

マンションの資産価値を決める上で、「立地」の次に重要な要素が、マンション自体のハードとソフト、つまり建物の「施工」と「管理」の質である。

 

中古マンションを買う場合、施工面における品質は重要な要素。年中どこかで雨漏りが起こったりしているような欠陥マンションは、ずさんな施工が行われたためで、ほかにも欠陥が隠れている可能性があり、購入は避けた方がいい。

 

もう一つ重要な要素が建物の管理だ。「中古マンションは管理で買え」とよく言われる。管理面がずさんなマンションを購入すると、後々「買って損をした」という結果になりかねない。

 

◇中古マンションの「管理」チェックシート

  1. 清掃がきちんとなされているか
  2. ゴミ置き場が整理されているか
  3. 管理員の所在がはっきりしているか
  4. 掲示板が整理されているか
  5. 自転車置き場が整頓されているか
  6. 管理員があいさつを返してくれるか
  7. ロビーにスーツケースを引いた外国人がいないか
  8. チラシがあふれているメールボックスはないか
  9. 共用廊下に自転車等が置かれていないか
  10. 植え込みに枯れたままの樹木がないか

(出所)筆者作成

 

この管理で重要な役割を担うのが、マンションの区分所有者で構成される管理組合だ。管理組合は、修繕積立金の運営や、実際にマンションの保全に当たる管理会社の選定も行う。つまり、管理組合の質がマンションの資産価値に影響するのである。

 

◇修繕積立金は必ず確認

 

マンション管理の重要な責務は、建物のハード面の保全である。鉄筋コンクリートで造られたマンションで、新築完成時を使用感や傷みが全くない「100」の状態とすると、年月を経るごとにさびやひび割れが増え、90、80、70と次第に劣化していく。その劣化をなるべく遅延させることで、住んでいる人々の快適な暮らしを維持できる。そのために適切な管理が必要なのである。

 

この管理を行う主体がマンションの管理組合だ。管理組合は建物の不具合が顕在化する前に、できるだけ低コストでメンテナンスを行うのが区分所有者にとっての利益となる。

 

管理組合の組合員は、区分所有者全員である。100戸なら100人の組合員がいる。管理方針を決める際、毎回、全員を集めるわけにもいかないので、何人かの「理事」とまとめ役の「理事長」を決める。理事と理事長で構成される理事会には予算の作成や執行権が委ねられる。

 

管理組合の重要な仕事の一つに、実際にマンションの維持業務を行う管理会社の仕事を常にチェックすることがある。管理会社は業務を委託された外注先にすぎない。よって「管理会社に任せておけば大丈夫」ということはない。管理会社は営利目的の企業なので、「この管理組合はやりやすい」となると、自分たちの売り上げを増やすために、不急不要な工事を提案してくる場合がある。

 

 

例えば、修繕積立金のチェックは組合の重要な仕事だ。管理会社の多くは、管理を受託しているマンションの修繕積立金残高を自社の将来の売り上げだと考えているので、できるだけ多く積み立てさせようとする。管理会社の言いなりでは、マンションの住民はいいように資産を吸い取られてしまうので、管理組合がチェックする必要がある。

同じ船に乗り合わせた人々
同じ船に乗り合わせた人々

管理組合の良しあしは理事会の良しあしで決まる。特に理事長の手腕や人柄にかかっている場合が多い。

 

例えば、清掃が行き届き、大規模修繕工事も一定期間ごとに行われていて、建物の状態も悪くない、一見魅力的な中古マンションがあった。ところが、購入を検討していた人が、管理費と修繕積立金を調べてみると、近隣の同レベルのマンションに比べて2倍以上だった。

 

実は、このマンションは、長年、理事会が無気力に運営されていて、何事も管理会社の言いなり。管理費や修繕積立金は「予算が足りません」と管理会社側から指摘されて何回も値上げしていた。

 

◇名物理事長は要注意

 

マンション管理というのはある意味で利権である。なぜなら、管理費や修繕積立金、駐車場使用料などの名目で区分所有者から徴収するお金の総額は、マンションの規模によって年間何億円にもなる。そのお金をどのように使うかを決めるのが理事会であり、実質的には理事長が決めることが多い。

 

何年も続けて理事会を牛耳っているような「名物理事長」がいる組合は要注意だ。長年、理事長に居座った住人が修繕積立金を何億円も横領していた、という事件もあった。

 

筆者は、かつてあるマンションの区分所有者に依頼され、組合を私物化している理事長を解任する手伝いを

したことがある。そのマンションは、どう見ても不要な大規模修繕工事を、銀行借り入れまでして実行し、修繕積立金の勘定をマイナスにしてしまっていた。そうしたずさんな管理をする理事長は、組合員が集まって管理規約を改定するなどして解任する必要がある。

 

◇総会議事録は〝通信簿〟

 

これから購入を検討しているマンションの管理組合に問題がないか、調べる方法がある。

 

筆者は中古マンション購入の相談を受けた際、検討しているマンションの管理組合の過去3年分程度の「総会議事録」を取り寄せて熟読することを勧めている。総会議事録は「利害関係者の請求があれば開示しなければならない」と、区分所有法で定められている。購入を検討している人間は、当然この「利害関係者」に当たる。

 

検討しているマンションの総会議事録を読みたければ、仲介会社に依頼すれば取り寄せてくれる。たいていは、議事録がPDF形式で、メールで送られてくる場合が多い。仲介会社によっては数千円の手数料を取る場合もあるが、それを惜しんではいけない。

 

管理組合は年に1回、総会を開く。そこで必ず行うのは決算と予算の承認である。決算は、前年度に管理費や修繕積立金をどのように使ったかの明細が示される。一方、予算は、今年度にどのように使うかの見通しを示したものだ。

 

例えば、議事録に「雨漏りに悩んでいる」という住民の意見があったとする。雨漏りというのは、躯体(くたい)コンクリートか窓枠などの工事不良の場合がほとんど。言ってみれば欠陥マンションの一種だ。そういう物件は絶対に買わない方がいい。

 

そうした意見が直接、書いていなくても、決算や予算の中に「A建設/西側外壁部分防水補修工事費」とか「B工務店/雨漏り調査費」のような項目が入っていれば、マンションのどこかで雨漏りが発生していたと分かる。

 

あるいは、議事録に、理事長解任のための臨時総会の記録があり、現在も理事長が解任されていない場合は、そのマンションは何らかの紛争を抱えている可能性がある。私が関わったような、理事長が修繕積立金をマイナスにしてしまったケースは典型的で、そうしたマンションは、大地震が起きて建物が損傷しても、緊急に出費できるお金がほとんどなく、資産価値を低く評価されても仕方がない。

 

総会議事録は、いわばそのマンションの管理状態を示す「通信簿」のようなもの。それを読まずにマンションを買うのは、履歴書を見ずに人を採用するようなものである。

◇「総会議事録」のチェック項目

  1. 決算が赤字になっていないか
  2. 修繕積立金が1住戸100万円以上になっているか
  3. 理事長、理事の交代が適時行われているか
  4. 雨漏り、漏水対策に予算が使われていないか
  5. 管理費滞納住戸の有無とその対策は
  6. 出席者の発言に不穏なものはないか
  7. 修繕積立金の値上げが議論されているか
  8. 可決議案で反対票の多いものはないか
  9. 元の売り主との対立関係はないか
  10. その他、紛糾している問題はないか

(出所)筆者作成

(『週刊エコノミスト』2016年11月8日号<10月31日発売>30~31ページより転載)

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この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年10月31日

週刊エコノミスト 2016年11月8日号

 

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