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FLASH!:産業革新機構のシャープ支援 2016年2月9日号

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 ◇円安倒産回避とJDI迂回支援

 ◇半端な産業再編は共倒れリスク

 

後藤 逸郎

(編集部)

 

 ◇JDI(ジャパンディスプレイ)

 

 経営危機にある大手家電のシャープに対し、官民ファンドの産業革新機構(志賀俊之会長)は約3000億円を出資する支援方針を正式提案する。約3500億円の債権放棄などを核とする主力行の金融支援も仰ぎ、シャープの液晶事業を分離して、2018年にも機構傘下の中小型液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)と統合する(図1)。だが、異例の本体出資は、シャープの倒産回避とJDIへの迂回(うかい)支援の意味合いが強い。生煮えの支援策は、どちらの成果も得られないリスクをはらむ。

 志賀会長は1月25日、経済産業省の新産業構造部会後、約3000億円の出資と液晶分離でシャープの出血を止め、成長させる考えを明らかにした。シャープの高橋興三社長が15年7月末に液晶事業の切り離しを表明して以来、支援策がようやく固まった。機構案の正式決定を待って、銀行団は3月末に期限を迎える協調融資残額の借り換えに応じる見込みだ。

 シャープは15年9月末時点で、約7600億円の有利子負債を抱え、自己資本比率は9・4%に低下。16年3月末に約5000億円の協調融資の返済期限を控える。機構の本体出資が実現すれば、毀損(きそん)した自己資本を増強できる。協調融資の条件見直し材料として、銀行団にとっての意味も大きい。大幅赤字を招いた液晶の分離は、シャープの財務悪化に歯止めをかける。

 だが、意気軒昂な機構と裏腹に、シャープや債権放棄を迫られる主力行からは、液晶分離後のシャープの将来像が見えないことに戸惑いが強い。機構の設立趣旨は、民間がリスクを負えない「新たな付加価値を創出する革新性を有する事業」の支援だ。シャープとJDIの液晶事業統合だけならまだしも、本体出資までするのは救済に他ならない。技術の海外流出防止と中小型液晶再編という大義を掲げるほど、シャープの将来像の乏しさが際立つ。「アベノミクス下の円安で大型倒産は認めないということなのか」(融資下位行)との疑念は強い。

 

 ◇シャープ解体案

 

 唐突に浮上したシャープと東芝の白物家電の統合案は疑念に拍車をかける。経営不振のシャープにあって、白物家電は数少ない安定した事業だ。一方、東芝の白物は営業赤字がかさみ、リストラを進めている。加えて、2社とも国内市場が中心で、「規模の拡大による統合効果は薄い」(シャープ幹部)のが現実だ。

 家電統合の難しさは、09年のパナソニックの三洋電機買収の先例がある。三洋のヒット商品で、コメからパンを作るホームベーカリー「GOPAN(ゴパン)」について、パナソニック首脳は買収後、「ウチだったら出さない」と評価した。作動時の音の大きさなどの問題点を指摘したものだが、長所を取るか、短所を取るかの社風の違いともの作りの難しさを示している。パナソニックは結局、三洋の家電部門を売却した。だが、経済産業省内では「シャープ解体案」が公然とささやかれている。救済色を薄めるための解体・再編であれば、本末転倒の議論だ。


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