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特集:トランプショック 意外と知られていないトランプ氏の具体的な政策

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◇法人税35%から15%へ減税

◇年平均3・5%成長目指す

 

秋山勇(伊藤忠経済研究所長)

 

「悪いのは不法移民、不公平な貿易、米国の庇護(ひご)にただ乗りする諸外国だ」。トランプ氏は選挙期間中、エキセントリックなメッセージを繰り返したが、その具体策は意外と知られていない。問題解決に向けて、一体どのような政策を準備しているのか。

 

トランプ氏は選挙用のウェブサイトに「有権者との契約」と題し、経済、税などの政策を掲げている。経済では、年平均3・5%の成長目標と10年間で2500万人の雇用創出を掲げ、そのために税制や規制改革などが必要とする。「国内は自由化して供給力拡大、海外は公平な貿易」というビジョンをよく示している。

 

 

 

貿易の具体策は、(1)環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱する、(2)貿易協定の違反国をみつけ、違反をやめさせる、(3)北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉し、相手国が応じなければ離脱する、(4)中国を為替操作国と認定する、(5)中国を世界貿易機関(WTO)に提訴し、ルールを順守させる、(6)中国が違法行為をやめなければ、大統領権限を使い、通商紛争に対処する──といった内容だ。

 

移民については米国民の雇用、賃金、安全を最優先とした新たな移民管理を導入するビジョンを掲げ、不法移民対策を強化する。具体的には、(1)メキシコとの国境に壁を建設する、(2)不法移民の犯罪に厳しく対処する、(3)不法移民を受け入れる聖域都市を廃止する、(4)オバマ大統領による不法移民恩赦の大統領令を廃止する、(5)全ての入出国管理に生体認証システムを導入する──などだ。

 

このほか法人税を現行の35%から15%へと大きく引き下げることや、老朽化したインフラを刷新するための積極投資、軍事予算の増加、大学の学費削減なども掲げている。

 

しかしこれらの計画は、耳に心地の良い共和党と民主党の施策を混在させており、大減税の一方で、政府が大盤振る舞いする「超緩和型」。実施すれば、財政規律が乱れることは明白だ。各政策の整合性や実現可能性も不透明で、共和党内からの反対意見も多い。大統領と上下両院の多数派を共和党が占め、政権と議会の「ねじれ現象」が解消されることはトランプ氏の政権運営に追い風だが、党主流派との「落としどころ」はどう調整するのか。トランプ氏の手腕が見どころになる。

*週刊エコノミスト2016年11月22日号 緊急特集「トランプショック」掲載


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