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粉飾ダマし方見抜き方 マイケル・ウッドフォード 元オリンパス社長インタビュー

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◇日本の企業風土 「変わらぬ上役への盲目的な服従 東芝問題が示したカイシャの欠点」

 

 オリンパスの粉飾事件につながる告発を行い、解任された元社長のマイケル・ウッドフォード氏が日本企業の問題を指摘した。

 

── 上場企業の粉飾決算の開示件数が増えている。

ウッドフォード 安倍政権の中で、日本の企業風土は変わりつつあると主張する人がいるが、東京商工リサーチのデータを見る限り、それは幻想に過ぎない。2011年に発生したオリンパス事件以降、「不適切な会計・経理」を開示した企業は倍増し、15年度は過去最高を更新している。ホワイトカラーによる犯罪が、日本の多くの企業人に同情を持って受け止められている日本社会においては、私はこれは氷山の一角に過ぎないと確信している。

 

── 日本の企業風土に起因するものなのか。

ウッドフォード 最近の取引所によるコーポレートガバナンス・コードの導入自体は良いことだし、歓迎されるべきことでもある。しかし、日本のカイシャに企業統治上の問題をもたらしている根本原因を、是正することにはならないと考えている。東芝のスキャンダルは、まさに、オリンパス事件が発生した5年前から、何も変わらなかったことを表している。

 

── それは何か。

ウッドフォード 日本企業では、社内のヒエラルキーに対する「盲目的」な服従は当たり前のものだと考えられていることだ。ホワイトカラーによる犯罪は、しばしば、「誰も傷付けないし、被害者もいない」と社会で受け止められている。至高の価値は、「企業への忠誠心」であり、これは、容易に「盲目性」と「黙認」に転換する。その結果、あらゆる問題に対して、善悪の判断が容易に失われることになる。

 

 ◇敵対的買収の許容で社風刷新

 

── 11年10月の解任後、大きなニュースとなったにもかかわらず、検察などの動きは鈍かった。

ウッドフォード 5年前の解任後、会社に戻るためにあらゆる犠牲を払ったことは、今から思えば馬鹿げたことに思えるが、同時に、それが実現しなかったことをいまだに残念に思っている。日本の権力機構は、20億ドルに上る経済犯罪自体ではなく、私が日本社会に不協和音をもたらし、公にすることに対して、警戒していた。この現実を、後ろ髪を引かれつつも、受け入れざるを得ない。

 

── 企業の内側から変えるのが難しければ、どうすべきか。

ウッドフォード 日本の企業風土を最も良い形に変える、唯一かつ最善の方法は、ガバナンス・コードや表面的な儀式でもない。それは、敵対的な買収を許容し、促す法整備だ。日本企業の大部分は、官僚的で凡庸な取締役会によって運営されている。取締役たちは中途半端な業績に陥っても誰も責任を取らされることがない。

 

── 敵対的な買収について、日本ではアレルギーがある。

ウッドフォード 日本社会においては、敵対的な買収は、「恥ずべき行為」と受け止められている。企業の株式は、本当に企業価値を高めようとする機関投資家に保有されておらず、企業は通常の商業ベースではあり得ない好条件で銀行からお金を借りることもできる。取締役たちは、買収防衛策により、自主的に退任するか、あるいは、死ぬまでその地位にとどまることができる。

 

敵対的買収は、「弱いモノが強いモノに駆逐される」ことにより資本主義を成功に導く最も重要なメカニズムの一つだ。もし、この手段が存在しないのなら、企業統治上の問題は脇に置いたとしても、日本が切実に手に入れたがっている「経済的な再生」の機会を大きく削(そ)ぐことになる。

(聞き手=稲留正英・編集部)

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 ■人物略歴

 ◇マイケル・ウッドフォード(Michael Woodford)

 1960年生まれ。英リバプール出身。81年英KeyMed(キーメッド、現オリンパス子会社)入社。2008年オリンパス欧州法人社長を経て、2011年4月オリンパス社長、6月に同代表取締役社長CEOに就任。同年10月14日に解任。著書に『解任』(早川書房)。

 


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