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ファミマvsローソン 商社のコンビニ戦争本格化

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ユニー・ファミリーマートHDの社長に就任する高柳浩二・伊藤忠商事副社長(右)と、上田準二・現社長
ユニー・ファミリーマートHDの社長に就任する高柳浩二・伊藤忠商事副社長(右)と、上田準二・現社長

 コンビニ事業に商社が関与を強めている。

 

 2月9日、三菱商事はローソンの公開買い付け(TOB)を完了して持ち株比率を33・4%から50・11%超まで引き上げ、連結子会社化した。TOBに投じた費用は1440億円。三菱商事の京谷裕常務は16日の会見で「投資に見合うリターンを見込んでいる」と期待を寄せた。

 

 ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は2月3日、筆頭株主の伊藤忠商事の高柳浩二副社長が3月1日付で新社長に就く人事を発表した。高柳氏は会見で「(ユニー・ファミマHDを)子会社化する考えはない」と前置きしつつ、「株主として一定程度の関与はしたい」として、伊藤忠のネットワークを使ったコンビニ事業の強化に意欲を見せた。

 

 コンビニ業界は、再編を経て店舗網を拡大した2位のファミマ(店舗数1万8100店)と3位のローソン(同1万2971店)が首位セブン─イレブン(同1万9220店)を追う構図だ。ファミマとローソンには総合商社首位の座を争う伊藤忠と三菱商事がそれぞれ出資しているため、「代理戦争」と言われることもある。

 

 ただ、コンビニの稼ぐ力の指標とされる日販(1店の1日当たり平均売上高)では、王者セブン─イレブンの背中は遠く、2位争いをしている余裕はない。セブン─イレブンの日販は66万4000円だが、ファミマは52万5000円、ローソンは54万6000円で、10万円以上の開きがある。

 

 日販を引き上げるカギの一つとなるのが、商社の食料品サプライチェーンを生かした商品開発や商品調達網の強化だ。ユニー・ファミマHDの社長に就く高柳氏は伊藤忠の食料部門のトップで、ローソンの竹増貞信社長も三菱商事の畜産部出身。食を通じて商社とコンビニの結びつきがますます強まることになる。

 

 ◇GMS再建が重荷に

 

 高柳氏は4月1日付で伊藤忠の副会長に就くことが発表されていたが、それを翻しての社長就任となった。本人は「(伊藤忠の副会長は)けっこういいなと思っていた」とひょうひょうと話すが、営業、エネルギー、生活資材・化学、食料を担当し「伊藤忠の社長候補」の呼び声が高かったやり手。ユニー・ファミマHDの社長としてコンビニ事業の拡大とともに、ユニーが抱える「アピタ」「ピアゴ」などの総合スーパー(GMS)の立て直しという重責を担っている。

 

 GMSは衣料品の大型専門店などの登場で不振が続く。ユニー・ファミマHDはGMSを216店舗中36店舗の閉鎖を計画していたが、高柳氏は「閉鎖店舗をもう少し増やす」可能性を示唆し、徹底的に改革を進める意向を示した。ただ、「GMSは業態自体が時代遅れ」(小売り担当アナリスト)との声もあり、再建は容易ではない。

 

 取締役相談役に就任するユニー・ファミマHDの上田準二社長は2002年の社長就任以降、ファミマを成長させた「中興の祖」。ユニーとの経営統合を指揮したのも上田社長だった。だが伊藤忠の岡藤正広社長は、不採算店が多いGMS事業を抱えたままの経営統合に難色を示していたと言われ、上田社長との確執がささやかれていた。「でしゃばり過ぎない人柄もあって岡藤社長に近い人物」(商社担当アナリスト)である高柳氏の起用は、統合をめぐって生じた伊藤忠とユニー・ファミマHDとの「距離」を縮める意図が透ける。また高柳氏は上田社長に比べてユニー側経営陣とのしがらみが少ない分、GMSの改革で大ナタを振るえるとの見方もある。

 

 ただ、改革は待ったなしだ。コンビニ事業では、店舗売り上げを伸ばしやすい総菜などの「中食」やプライベートブランドの強化、オーナーの高齢化が進む加盟店対策、商品管理の効率化などで大手3社がしのぎを削る。GMSの再建に足をとられていると、後れをとることになる。

(花谷美枝・編集部)

 

*週刊エコノミスト2017年3月7日号 「商社の深層」掲載


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