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技術者を正社員雇用して派遣し急成長 若山陽一 UTグループ社長

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Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな事業をしているのですか。

 

若山 当社が正社員として雇用した技術社員を半導体を中心に、電機、自動車、建設などの工場や現場に派遣する事業です。常時1万6000人を派遣しており、7割が正社員です。残り3割は、勤務場所などの関係でその地位を選んだ非正規社員です。派遣先の中核は半導体産業です。

 

── 正社員派遣とは珍しいビジネスモデルですね。

 

若山 派遣に対する世間一般のイメージは「不安定」「有期雇用」などでしょう。当社は違いますが、大多数は、派遣期間は3カ月で、契約更新時に次の契約の給料を決めるというモデルです。一般には派遣社員の給料は、派遣先と派遣会社の間の契約に合わせて決まる。職歴の連続性など加味されていません。これでは、派遣社員は常に3カ月先のことなど考えられない状態です。派遣という働き方が増えていく中で、派遣される技術社員に安心・つながり・成長を提供する会社でありたいと考えました。安心の一つの形として正社員として雇用しています。

 

── 正社員派遣によって、派遣社員にはどのようなメリットがあるのですか。

 

若山 給料が、派遣先と派遣会社の契約に左右されるのではなく、当社の賃金体系によって社員が持っている技術を評価して給与を決めることです。当社の理念は「派遣社員がお客様」です。技術社員に当社を活用してキャリアを形成してもらい、可能性を広げるのに資することに存在意義があると思っています。

 

 ◇半導体への派遣が中核

 

── なぜ半導体への派遣を中核としているのですか。

 

若山 1995年に創業して以来売り上げが伸びていましたが、2001年にITバブル崩壊の影響もあり、初めて減収となりました。競合の大きな派遣会社と同じことをしていては、生き残れないと感じました。当時『ビジョナリーカンパニー2』(ジム・コリンズ)を読み、この会社の使命をきちんと決めようと決意しました。未来永劫(えいごう)社員が納得して働ける会社を作ろうと、当時の社員36人と1年間議論したのです。その議論の中で「チーム派遣の需要があり、高い技術力が求められる分野が、当社の事業戦略にかなう」という結論になりました。その分野にあてはまる事業が半導体だったのです。

 

── どのように半導体派遣事業を立ち上げたのですか。

 

若山 当時は米国系半導体メーカーのリストラがあり、30人を採用しました。彼らに半導体に必要な営業資料や教育資料を作成してもらい、会社の仕組みを変えました。それが今日の当社の中核となっています。

 

── その経験が現在に生かされているのですね。

 

若山 あの危機は、ビジネスや会社の根幹を考えるいい機会になりました。自分たちの価値観を発見したことで、一気に会社が動き出しました。その2年後にはJASDAQに上場し、現在は東証1部上場を目指しています。大きな変化は、絶対的なビジネスチャンスと言えます。

 

── いつごろから正社員派遣モデルを描いていたのですか。

 

若山 大学時代からインターンで派遣会社に勤め、24歳で起業し機械設計の技術者派遣を始めました。ただ、当時から正社員派遣を思い描いていたのではありません。さまざまな派遣社員とかかわる中、派遣社員の生活基盤を良くする会社でありたいという思いが積み上がった結果です。

 

── 正社員派遣は人件費がかかるのでは。

 

若山 当社は働きがいを通じて離職率の低さを実現しています。また、1人ではなく、平均で30人単位、多いと500人、1000人規模のチームで社員を派遣する「チーム派遣」の形を取っており、生産性は高いです。これらの付加価値を提供しているコストを、お客様が必要とされているので、経営の圧迫要因にはなりません。

 

── チーム派遣とは珍しいですね。

 

若山 プロフェッショナルが1人で派遣されて「絶対にこの仕事を遂行する」という欧米型モデルの派遣は日本人に合っていません。また、もの作りはチームで仕事をするものです。チームの力で学び教え合い、生産性を向上してきたのが日本なのです。また、1人で派遣されると、現場で誰が上司なのか同僚なのか分からない中、不安定な気持ちで働くことになるからです。体系だったチームで派遣することで、このような問題に対処できます。派遣先のお客様にも、労務管理が効率よくなるというメリットがあります。

 

── 国内で人手不足が深刻化しています。派遣社員確保に影響は。

 

若山 当社では月間300人の純増を達成しています。ポイントは、派遣先のお客様が良い条件を示してくれる仕事を確保することです。その条件とは、契約期間が長くて、派遣社員の受け入れ数が多く、派遣単価が高いという三つです。当社の希望条件を理解してくれて、職場環境も整備されている派遣先というと、自然に大企業になるのです。当社の顧客に日本を代表する企業が多いのもこのような理由からです。

 

── 具体的な派遣先は。

 

若山 日立製作所グループやトヨタ自動車、東京エレクトロンなどです。売り上げベースで、半分が半導体・電子部品、25%が電池・環境エネルギー、自動車関連が16%です。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 32歳で上場しました。24歳での起業以来、社員・顧客と直接顔を合わせる人と仕事をしてきましたが、直接顔を合わせない株主の方々に対して客観性と一貫性をもって会社の説明をできるように意識が変わりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 絵本の『スイミー』(レオ・レオニ)です。チーム派遣にも通ずるものがあり、2000~3000冊買っていろいろな人に配りました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 昨年生まれた息子を風呂に入れたり、一緒に遊んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇わかやま・よういち

 1971年生まれ、愛媛県出身。日本大学を中退後、人材派遣会社に勤務。1995年に前身のエイムシーアイシーを設立。2007年、ユナイテッド・テクノロジー・ホールディングスとしてグループ持ち株会社設立。15年に現在の社名に変更。46歳。

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事業内容:製造、設計開発、建設分野などの正社員派遣事業

本社所在地:東京都品川区

設立:2007年

資本金:5億円

従業員数:1万6118人(17年3月現在)

業績(17年3月期)

 売上高:575億8800万円

 営業利益:34億1300万円


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