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〔スクープ〕弁護士が極秘情報を事前入手 オリンパス再建に深く関与

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オリンパスの高山修一社長(当時)
オリンパスの高山修一社長(当時)

 2011年に発覚したオリンパスの巨額粉飾決算事件に際し、同社の再建シナリオに、弁護士事務所が大きな影響を及ぼしたことが、同社の内部資料で明らかになった。「オリンパスが債務超過ではない」という極秘情報をいち早く入手することで、銀行団の支持を得て、上場維持への道筋を開いたと見られる。ただ、一連の動きは、外国人投資家など株主からは見えない水面下で行われており、企業統治上、適切だったのか、検証が必要になりそうだ。

 

 内部資料は11年11月11日に、同社の顧問弁護士事務所である森・濱田松本法律事務所とその後任のビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所(現アンダーソン・毛利・友常法律事務所)が合同で、森久志・副社長から聞き取る形式をとっている(内部資料の全文を下に掲載)。

 

 ヒアリングでは、オリンパスの財務状態について、細かい質疑が行われている。ビンガムは森氏に、「一番関心あるのは、バランスシートが引き続いているかどうか。マーケットもそれから当局も非常に気になっていると思う」(内部資料40ページ)と述べ、財務諸表が簿外債務の計上も終えた状態を示しているのか質問。それに対し、森氏は、粉飾に使われた英国医療機器会社の優先株311億円だけが、「損認識しないといけないんじゃないかなと思ってます」と返答し、仮に損失を計上しても自己資本の範囲内に収まり、債務超過にはならないとの見方を示している。

 

 ◇最大の関心事

 

 粉飾決算発覚当時、オリンパスは6000億円超の有利子負債を抱えており、仮に債務超過に陥れば、銀行は信用格付けの低下から融資を継続できず、資金繰り面から破綻する恐れがあった。また、東証の上場維持の判断に大きく影響することは必至で、同社の財務状態は利害関係者にとって、最大の関心事だった。

 

 ビンガムは、5日後の16日に森・濱田の後任の法律顧問に就任。倒産法制の専門家で千代田生命の更生管財人を務めた坂井秀行弁護士(現アンダーソン・毛利パートナー)が顧問として、当時の高山修一社長=写真=を強力に支援した。

 

 当時、オリンパスの経営陣は、巨額の使途不明金を追及して解任された前社長CEOのマイケル・ウッドフォード氏と激しく対立。株主委任状争奪戦(プロキシーファイト)も勃発し、経営は混乱を極めていた。しかし、関係者によると、企業経営に詳しい坂井氏の登用により、銀行団も高山氏ら当時の経営陣を支持する方針を固めたという。

 

 アンダーソン・毛利は、一連の事実関係の確認を求める本誌編集部の問い合わせに対し、「特定の企業についてはコメントできない」と回答した。

 

 12月6日にオリンパス第三者委員会が報告書を公表すると、オリンパスは翌7日に「経営改革委員会」を設置し、独立性の高い委員会の助言により再建を進めると発表。また、「取締役責任調査委員会」などを設け、現旧取締役や監査役、監査法人の責任追及を進めるとアピールした。その結果、同社の経営は高山社長のもと、安定を取り戻していった。

 

 銀行団の支持が得られなかったウッドフォード氏は12年1月に、プロキシーファイトから撤退。同年4月の臨時株主総会では、高山社長が指名した笹宏行氏が新社長に就任した。

 

 ただ、オリンパスのこうした内部事情は、同社の発行済み株式の約3割を保有していた外国人株主など外部からは一切見えなかった。政府が進める企業統治改革は、企業の意思決定過程の透明性確保を求めており、その観点から問題がなかったのか、疑問は残りそうだ。

(編集部)

*週刊エコノミスト2017年10月17日号掲載

オリンパスの内部資料

2011年11月11日に、同社の顧問弁護士事務所である森・濱田松本法律事務所(文中ではMHM)とその後任のビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所(現アンダーソン・毛利・友常法律事務所、文中ではビンガム)が合同で、森久志・副社長(文中では森)から聞き取る形式をとっている。


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