◇九州で進む合従連衡
◇伊予・広島の瀬戸内統合も
花田真理
(ジャーナリスト)
日銀が導入したマイナス金利政策は、地銀再編を加速させる起爆剤となりそうだ。もともと、地銀は地域経済の低迷などから厳しい経営環境に置かれ、2000年代に入って再編が進行していたが、マイナス金利政策の導入により、国内の市場金利が著しく低下。債券利回りの低下に加え、住宅ローンや法人向け貸し出しなどでも過去に例をみない金利競争に突入しており、金利収入の大幅な落ち込みが避けられない状況となっている。
そうした状況を反映した経営統合が2月26日、地銀再編の激戦地・九州で発表された。福岡銀行(福岡)、親和銀行(長崎)、熊本銀行(熊本)を傘下に置くふくおかフィナンシャルグループ(FG)と長崎県トップ地銀の十八銀行が、17年4月に経営統合することで合意。総資産は約18・7兆円(15年9月期の単純合算)と、横浜銀行(神奈川)と東日本銀行(東京)が統合して今年4月に設立するコンコルディアFGを抜いて地銀トップのグループとなる。
持ち株会社方式による県境を越えた地銀の再編は、03年に北海道銀行(北海道)と北陸銀行(富山)が経営統合して設立したほくほくFGが先駆けといえる。その後、ふくおかFG(07年4月)など各地へ広がっていったが、不良債権を処理できず経営難に直面する地銀や、各県2番手以下の弱小地銀同士による再編が主だった。しかし、肥後銀行(熊本)と鹿児島銀行(鹿児島)の経営統合による九州FGの設立(昨年10月)を皮切りに、現在はトップ地銀同士の再編が熱を帯びている。
◇西日本シティは佐賀と?
今後の地銀再編を巡ってまず注目されるエリアが、ふくおかFG再編劇の波紋が広がる九州だ。十八銀行は佐賀銀行(佐賀)、筑邦銀行(福岡)と勘定系システムを共同化していたが、トップバンクの十八銀行が離脱することで、残る2行にとってはシステムコストが想定外の負担増となることが確実。何より、佐賀銀行はふくおかFGの傘下地銀に両脇を囲まれる格好となってしまう。
佐賀銀行に関しては、今年10月に持ち株会社を立ち上げる西日本シティ銀行(福岡)と経営統合する観測が昨年末から強まっており、今回のふくおかFGと十八銀行の経営統合によって、その動きが急展開する可能性がある。山口銀行(山口)、もみじ銀行(広島)、北九州銀行(福岡)を傘下に置く山口FGも広島・福岡への両翼戦略を進めており、筑邦銀行などが山口FGを含む周辺地銀との再編に発展しても不思議はない。
九州南部では、九州FGの動向に注目だ。鹿児島銀行は宮崎銀行とは反目し合うが、ここに来て九州FGが宮崎太陽銀行を取り込む形で、南九州3県にまたがる経営統合の観測が浮上している。さらに、鹿児島・肥後の両頭取と大分銀行の頭取は慶応義塾大学の同期生で、日頃から交友関係がある間柄。九州FGに大分銀行が加わる可能性は以前からささやかれており、実現すればふくおかFGの独走を許さない巨大地銀グループが誕生することになる。
地元経済の低迷にあえぐ四国ではどんな再編が起きてもおかしくはないが、四国トップ地銀の伊予銀行(愛媛)と、瀬戸内海を隔てた広島銀行(広島)との統合観測が再燃している。伊予銀行では14年、次期頭取と目されていた現役常務による多額の横領が発覚し、自殺に追い込まれる前代未聞の不祥事が起きたことで、「統合シナリオが狂った」といわれていた。しかし、マイナス金利政策で事態が一変しており、統合交渉をひそかに進めている可能性がある。………