オリンパスが医療機器子会社のトラブルを巡り中国で税務当局を買収していたことが明らかになった。
オリンパスで新たな贈賄疑惑が浮上した。中国の医療機器販売子会社がトラブル解消のために地元の税務局を買収、会社がひそかに関係者を処分していた。日本の不正競争防止法をはじめ、日中米の贈収賄関連法令に違反する可能性が高く、同社のコンプライアンス(法令順守)体制が改めて問われそうだ。
編集部が入手したオリンパスの内部資料などから判明した。同社の2011年8月18日付の電子メールによると、中国統括子会社の日本人管理統括責任者が、中国の医療機器販売子会社と広州市税務局との間で発生した医療機器の備品管理を巡るトラブルを解消するために、税務局に10万人民元(日本円で約170万円)を支払うことを、医療機器販売子会社の日本人責任者に説明。管理統括責任者は、この10万人民元について「袖の下」と言明している。
この管理統括責任者は、同じメールで「(賄賂は)過去から特別枠での対応をしていた」と説明。その理由として、税務上の見解の相違で脱税と見なされるケースについて、税務当局と争うと会社名が外部に公表されるため、「それを嫌がって、過去よりそういった対応をしてきた」と語っている。
それに対し、医療機器販売子会社の責任者は、「結局、10万元で別途対応するのか?」と返信している。
◇2人は17年に退職
管理統括責任者は、日本に帰国後、13年に本社財務部長に就任、販売子会社の責任者は14年にアジアにおける医療機器販売担当の本社執行役員に昇格した。しかし、映像機器を生産する中国深セン工場(OSZ)の贈賄疑惑に絡む社内調査が15年2月にスタートすると、その過程で、医療機器販売子会社の贈賄事案が明らかになった。
関係者によると、社内調査を行った西村あさひ法律事務所の木目田裕弁護士が「直接賄賂を渡すのは明らかに日本の不正競争防止法に違反する」と指摘。その結果、オリンパスはこの2人を処分し、財務部長は17年1月、執行役員は同年3月にそれぞれ、オリンパスを退職した。
オリンパスは編集部の取材に対し、「本件に関しては、西村あさひを起用して調査を実施し、必要な関係当局に自主的に報告している。なお、関係当局との関係上、公表は差し控えている」と回答。2人の退職理由については、「個人のプライバシーにも関わることなので、コメントは差し控えたい」とコメントした。西村あさひは、「この件については、回答しかねる」と回答した。
オリンパスを巡っては、OSZが深セン税関とのトラブルを解消する際に雇った中国コンサルが税関を買収した恐れがあるとして、15年2月に社外取締役を委員とする社内調査委員会が発足。同年10月の最終報告書では、この中国コンサルが税関を買収した直接的な証拠が見当たらないことを理由に、「日中米の贈収賄関連法令に違反する行為が無かった」と認定している。
しかし、今回、医療機器販売子会社が直接贈賄した証拠が出てきたことで、OSZの贈賄疑惑についても、独立した第三者による徹底的な再調査を求める声が強まることが予想される。
(編集部)