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(2018年の経営者)(今井 雅則)=(戸田建設)社長

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建設事業以外でも社会貢献を 

今井雅則 戸田建設社長

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 

── 戸田建設の強みは。


今井 慶応義塾図書館や早稲田大学の大隈講堂などに携わってきた歴史があり、学校に強いと言われます。また、病院など医療福祉についてもたくさんの実績があります。


──
 学校や病院に強い理由は。


今井 経営方針として「企業活動を通じて社会の発展に貢献する」を掲げています。学校については、大学の実績によって系列の高校などにも広がっていきました。病院も、事務長などの横のつながりがあることで、増えています。施工実績と共に、現場の社員も経験を積んでおり、より使いやすいものを提案できるようになっていることが大きいですね。


──
 社会貢献に力を入れているのですね。


今井 2016年10月には、建設業界全体の人材育成を狙いにした「戸田みらい基金」を創設しました。基金の規模は約3000万円で、若手技能者の育成などを目指す会社や団体に1件当たり100万円まで助成します。自社のリクルートのことだけを考えていては、業界全体の発展はありません。


──
 スーパーゼネコンとの違いは。


今井 建設の総量で勝負するかどうかだと思います。1990年代前半に80兆円を超えていた日本の総建設投資額は現在、50兆円程度まで減少しています。人口が減る日本では、今後も減少するのは当然の流れです。量が確実に少なくなる中で、量だけで勝負するのは難しい。建設以外の事業も大事になってきます。もちろん、ベースの建設がなくなることはありませんが、その他の強みもつくっていく必要があります。


──
 建設分野で大事なことは。


今井 ドローンやロボット、AI(人工知能)などの技術を利用しながら、社会問題を解決していくというところに私たちの活動エリアがあると考えています。強みにしている病院では建物だけでなく、特に地方では高齢者の見守り機能や遠隔地診療など情報関係の技術が重要になってきます。学校も、学生数が増えない大学では、人生100年時代において、生涯的な付き合いが大事になってきます。そうした新たな時代に対応する施設の提案をしていくのが、私たちの仕事です。いろいろな付加価値をつけて、よりよいものを提供していくことが求められています。


──
 具体的にはどのようなことが考えられますか。


今井 例えば、工場であれば、今後は無人化が進むでしょう。そうなると、今のように窓は不要になるうえ、エネルギーや振動などの問題を考えても、地下の工場が一番安定しているということになります。そういう意味では、工場の地下化の技術は高めていかないといけないでしょう。


──
 社員の意識改革は。


今井 12年3月期と13年3月期の連結最終損益が2年連続で赤字になった時は、量だけを追い求めて個人に負担がかかっていました。会社が強くなるためには、一人一人が強くならないといけません。各個人がどのくらい稼いでいるかを意識化するために、営業利益と人件費を合わせた「付加価値額」を社員数で割った数字を指標の一つにした「生産性ナンバー1」という目標を掲げています。

 日本初の洋上風力発電

──
 建設以外の分野ではどのような事業をしていますか。


今井 16年から、長崎県・五島列島沖で、日本初となる浮体式洋上風力発電の商業運転を行っています。そういうものを広げて社会にも貢献していくことが、生き残るためには必要だと思っています。


──
 洋上風力発電の手応えは。


今井 洋上だと、陸上より風力が安定しています。余剰電力で漁船を動かしたり、離島の交通機関に利用したりするなど、化石燃料を使わない一つの世界をつくり出すことができます。漁業権のしがらみもあり、環境アセスメントを取得するための時間がかかるなどフロントランナーとしては大変な労力を感じましたが、全国に増やしていきたいですね。


──
 再生可能エネルギー事業にはどう取り組みますか。


今井 化石燃料だけではやっていけない時代です。我々は、これまでの技術の延長上で新しいことをやろうとしています。洋上風力発電にしても、コンクリートと鉄の技術を利用して、再生可能エネルギーという日本になくてはならないものに挑戦しているのです。私たちの領域を少しでも広げられるのであれば、M&A(企業の合併・買収)も検討していきたいですね。


──
 現在の海外展開は。


今井 米国やタイ、ベトナムなどに9拠点があります。特に72年に現地法人をつくったブラジルでは、経済の低迷で他の日系企業が撤退する中、歯を食いしばって仕事をしてきた成果が少しずつ表れてきています。仕事は、地場の工場や病院などの建設が半分、日系企業からの発注が半分です。ブラジル経済も持ち直してきたので、良い方向に向かっています。


──
 海外への新たな進出は。


今井 スリランカには15年に再進出し、17年にはJFEエンジニアリングや三井造船との共同企業体で、最大都市コロンボの鋼橋建設を約200億円で受注しました。


──
 海外事業の目標は。


今井 数字的な目標は固定しませんが、国内の需要が縮小する中で、世界で活況のところがあれば、国内からどんどんシフトしていけるようにしたいとは考えています。
(構成=松本惇・編集部)

 横顔

Q
 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか


A
 建設現場で一生懸命働いていました。35歳くらいで作業所長になり、一つのプロジェクトを任されて、どうやっていいものをつくるかを考えて奮闘する毎日でした。


Q
 「私を変えた本」は


A
 『朝日の直刺す国、夕日の日照る国古代の謎・北緯3521分の聖線』(池田潤著、郁朋社)という古代史の空間的研究の本です。著者は戸田建設時代の同僚で、衝撃を受けました。


Q
 休日の過ごし方


A
 ゴルフをすることが多いです。お客さんともやりますが、プライベートのような感覚です。
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 人物略歴
 いまい・まさのり
 1952年生まれ。大阪府出身。大阪府立三国丘高校、大阪大学卒業後、同大学大学院工学研究科前期課程建築専攻修了。78年4月に戸田建設に入社し、大阪支店長、常務、副社長などを歴任。2013年から現職。65歳。
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事業内容:建築、土木、不動産など
本社所在地:東京都中央区
創業:188115
資本金:230億円
従業員数:4872人(20173月末現在・連結)
業績(173月期・連結)
 売上高:42272200万円
 営業利益:2499800万円

 


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