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経営者:編集長インタビュー 松本大マネックス証券会長CEO 2016年3月29日特大号

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松本大マネックス証券会長CEO

◇新しい投資体験のために技術革新を続ける

 

── マネックス証券の強みは。

松本 当社は常に利用者の選択肢を広げてきました。日本株、香港株、米国株、世界中の投資信託、為替など幅広く取り扱っています。米国株については、他社が1000銘柄程度に対して、当社は約3000銘柄、つまり米国のほとんどすべての銘柄を扱っています。米国株の取扱時間も他社に比べて圧倒的に長い。そこが最大の特徴かな。

── マネックスグループとしては。

松本 グローバル化を進めています。2010年に香港の「BOOM証券」というアジアで最も古いネット証券会社を、11年に米国6位のネット証券「トレードステーション」(本社・フロリダ州)を買収しました。950人のグループ社員のうち約7割が外国人になり、そのほとんどが米国法人の従業員です。米国には技術系のエンジニアが多く、グループ内でシステムや取引ツールの内製化を進めています。

 そして、中国では我々が49%出資して、15年2月にオンライン証券の合弁会社を杭州で作りました。個人向けの証券ビジネスを持っている外資系証券会社は、我々が知る限りマネックスだけです。

── 中国というと去年の株暴落があって心配になる。

松本 中国は日本や欧米などとは全く違う国で、いろんなリスクがある。ですが、だからやめておこうとはならない。食品やビール、自動車など消費財の企業で、中国市場を無視する会社はない。当社は消費財の会社と同じ発想で中国を見ている。マーケットは巨大だから、ポテンシャルがあるのには変わりありません。

── グループの15年3月期売上高は509億円。現在の海外比率は。

松本 今は3~4割が海外で、中国は1%くらいです。将来的には、売り上げで日本が5割、米国が3割、中国が1割。利益では、日本が7割、米国2割、中国1割くらいを目指したい。

 

◇1万円、1%という革命

 

── 今春に、米投資信託運用大手バンガード・グループと、クレジットカード国内大手のクレディセゾンと組んで、ラップ口座(一般個人向けの投資一任サービス)の新会社を設立する。その狙いは。

松本 マネックス・セゾン・バンガード投資顧問という会社で、ラップ口座サービスを提供します。現在、大手証券が提供しているラップ口座は、300万~500万円が最低金額で、手数料も合計で約2・5%取られることがほとんど。一方、我々は、最低金額が1万円、手数料は合計しても1%にする予定です。

── いつ開始するか。

松本 開業は5月くらいの予定です。バンガードは、米ブラックロックに次いで世界で2番目の運用会社。バンガードの品質で、最低1万円、手数料は1%。僕は「ウルトラ革命的」だと思っています。

 日本は大相続時代のなかにあります。今後20年間で、不動産を含めて毎年50兆円規模の相続が起きると言われています。

 現在、野村証券には約110兆円の預かり資産がありますが、20年でその名義はどうなるか。僕の勝手な想像ですが、仮に半分が変わるとすると55兆円規模になります。その時にラップ口座が「500万円から」では敷居が高い。そこでバンガードの品質で、1万円から1%ならお客さんが来やすいだろうと。すごく戦略的で大事な新会社です。

── 金融と技術の融合「フィンテック」の可能性はどう見るか。

松本 我々は金融とテクノロジーの交わる場所で生まれたという意味で、フィンテックの第1世代だと思っています。テクノロジーを使って書斎で取引ができるようにして、「投資体験に革命を起こすんだ」と起業しました。今もそれは同じ。フィンテックでどれだけ体験を変えられるかが本質です。例えば、スマホのカメラで「これを作った会社の株を買いたい」とかざすとその会社の株が買えるなどです。

── ベンチャー出資にも注力している。

松本 我々が社内ですべてやっていくのは限界があるので、若いスタートアップ企業に頑張ってもらって、応援する形。彼らはおもしろいアプリ(ソフト)を作っても食べていけないが、150万以上の口座を持っている我々がユーザーになれば違う。出資したり、ユーザーとして使用料を払って、エコシステム(生態系)を作っていきたいです。

── 11月にマネックス証券の社長CEO(最高経営責任者)から、会長CEOになった。なぜか。

松本 グループにおける社長CEOは変わっていませんが、子会社のマネックス証券では会長CEOにしました。米国も含めグループ全体をまとめていくなかで、日本については社長職を分け、経営層を厚くしようというのが一つの狙いです。

 もう一つの狙いは、イノベーション(技術革新)です。社長にブレーキ役になってもらい、僕が思い切ってイノベーションをしていける仕組みにしました。

 米国と中国は将来的には大事で、国内の他の証券会社が参入しない間に、当社はせっせと準備をしています。また、このIT時代に自社でシステムを持っていないと寝首をかかれるので、せっせと内製化を進めています。そして、預金者という巨大市場にアクセスするためにバンガードと組みました。手前みそですが、かなり戦略的に動いています。

 

Interviewer 金山隆一・本誌編集長 構成 谷口健・編集部

 

■横 顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 35歳で起業しましたが、あっという間でした。とにかくひたすら働きました。その頃の記憶がないぐらい完全に仕事に没頭していました。

Q 最近買ったもの

A 大発会に行くために色紋付きの和服を買いました。先日社員の結婚式があり、それにも着ていきました。

Q 休日の過ごし方

A 夫婦でマッサージですかね。

 

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■人物略歴

まつもと おおき

1963年埼玉県生まれ。開成高校、東京大学法学部卒業後、87年にソロモン・ブラザーズ・アジア証券に入社。90年ゴールドマン・サックス証券に入社。94年同米国本社の共同経営者に就任。99年に独立し、マネックスを設立。52歳。


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