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【会社で役立つ経済学】マイナス金利はデフレで効く 3月29日特大号

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◇デフレで効く劇薬

◇日銀は処方時期を誤った

 

深尾光洋(慶応義塾大学教授)

 

 景気が比較的堅調な中で、日本銀行が1月29日に導入したマイナス金利政策は、導入のタイミングが悪いうえ、実施方法も中途半端なため、ほとんど効果がなかった。

 むしろ「日銀は日本の景気悪化を示唆する独自の情報を持っているからマイナス金利政策という劇薬を処方したのではないか」と疑われて、株価に悪影響を与えてしまった。

 足元の消費者物価指数(CPI)は悪くない。日銀が2%のインフレ目標のターゲットにしているコアCPI(生鮮食料品除く)は輸入食料品やエネルギー価格の下落によって前年比ゼロ%付近にあるが、国内経済の実態により近いコアコアCPI(食料・エネルギー除く)を見ると2015年8月以降、前年同月比0・7~0・9%と1%に近い水準で推移している(図1)。

 また、今年1月の有効求人倍率(季節調整値)は1・28倍と1991年12月(1・31倍)以来、約24年ぶり、東京に至っては1・88倍とバブル期のピーク(90年3月の1・68倍)を超え、74年7月以来約40年ぶりの高水準となった。

 ほかにも景気回復を示すデータは多い。日本企業の経常利益の名目国内総生産(GDP)比率はバブル期の約1・5倍に拡大(図2)。東証1部上場企業の時価総額も昨年、一時バブル期を抜き、その後も比較的高い水準を維持している。日本はすでにデフレから脱却しており、今さら強力な景気刺激策は必要ない。

 マイナス金利には、為替を円安にして日本の国際競争力を高めようという狙いもある。しかし、今以上の円安にするのは難しい。各国通貨に対する円の本当の実力を示す「実質実効為替レート」(物価変動と貿易取引量を考慮した為替相場の指数)は、77年と同水準(図3)。過去40年で見ても最安に近い円安水準にある。輸出競争力は下がっていない。

 

 にもかかわらず、日銀がマイナス金利を導入したので、筆者のところに外国人投資家から「日銀は何か悲観的な情報を持っているのか」と問い合わせがくるほど、市場は疑心暗鬼になった。日銀のマイナス金利は、実体経済への良い影響はほとんどなく、むしろ逆効果になっている。

 

 ◇デフレ時に使う

 

 実は筆者は15年前にマイナス金利の導入を提唱した。当時は、物価上昇率がGDPデフレーター(GDP算出時に用いる総合的な物価指数)でマイナス2%という深刻なデフレ下にあった。マイナス金利は、必要な時期に適切に実施すれば、大きな効果が期待できる。筆者が考えたのは、より大規模で、税収が上がるタイプのマイナス金利である。……

 

(続きは本誌で)


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