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【会社で役立つ経済学】SMAP騒動は日本の縮図 2016年3月29日特大号

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◇SMAPと小林幸子に見る芸能界と市場

◇日本の労働市場の縮図

 

松井彰彦/編集部

 

 2016年初、人気の男性アイドルグループ「SMAPの分裂・解散騒動が注目を集めた。所属するジャニーズ事務所から独立を検討していることが発覚したが、結局はメンバーが事務所側に謝罪

して解散は回避された。これはゲーム理論における「共同体と市場のせめぎ合い」の問題として読み解くことができる。

 一連の騒動は、SMAPの所属芸能事務所とテレビ局および芸能人からなる共同体が、独立を企てたメンバーの行為を「裏切り」と見なすことで、独立を阻止した事例と解釈できる。所属芸能事務所とテレビ局が一つの村社会を形成、その掟を破ろうとしたSMAPに対して事務所が、勝手なことをすると村八分だと警告、独立を抑止した。

 日本のタレントの多くは特定の事務所に所属し活動している。看板タレントが稼ぎ頭となり、売れないタレントの食い扶持を賄っている。SMAPの独立はこうした「村システム」を乱すものだ。看板タレントが独立すれば、村システムの土台がくずれる。「事務所から独立した芸能人は干される」という慣行は、村システムを維持するためのものだ。

 村八分は、「それなら都会に出る」という選択肢がある場合は効果がない。つまり、村システムの維持には外部市場が存在しないことが前提だ。別のシステムに低コストで移動できれば抑止力は働かない。村八分は村から出るコストが大きい場合に効果を発揮する。

 芸能界で村八分に遭い、復活したのが歌手の小林幸子さんだ。小林さんは12年に事務所でのトラブルが発端となって芸能界から干され、紅白歌合戦の出場も途絶えた。ところが、インターネットの動画共有サイトという新メディアが小林さんに注目。派手で巨大な衣装がテレビゲームのラストに登場する敵のボスを彷彿とさせ、小林さんは「ラスボス」と呼ばれネットユーザーの間で人気を得る。これを見たテレビ業界も捨て置けなくなり、小林さんは15年末の紅白歌合戦で復活を果たす。小林さんは、閉鎖的な旧システムから離脱し新市場を切り開いた好例と言える。

 

 ◇中途市場に行けない正社員

 

 SMAPと小林さんの事例は、日本社会の縮図だ。例えば、正規雇用と非正規雇用の問題がそうである。日本企業、特に大企業は、スキルのない若者の教育にかけたコストを、彼らが30~40代の働き盛りになったら回収するというシステムである。このシステムを維持するため、社員は会社とい

う共同体の秩序の中で生きていかなければならない。大企業のしがらみに嫌気がさしても、会社に縛られて動けないのは、中途市場というシステムに厚みがないためだ。会社という共同体から離脱すれば、非正規雇用の市場に行くしかない。……

 

(続きは本誌で)


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