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特集:下期マーケット予想 暗雲 世界経済 2018年7月3日号

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市場はどう動く 

株手仕舞うヘッジファンド 

米中貿易戦争の危機一髪

 

 投機筋は、すでに金利上昇や貿易摩擦による米国の景気後退の空気を感じ取っているようだ。


  マーケットアナリストの豊島逸夫氏は5月、ニューヨークのヘッジファンド14社を訪問。情報交換をする中で、戦後最長の更新が確実な米国の景気拡大が終息に向かうとの感触を深めたという。


  豊島氏は「米国のヘッジファドの多くが、年内に株のロング・ポジション(買い越し持ち高)を手仕舞(じま)う」と予測する。


  堅調な景気を背景に、政策金利を順調に引き上げている米国。米連邦準備制度理事会(FRB)が2015年12月から始めた利上げは、今年6月までに合計7回(1・75%)に達した。18年内2回(0・5%)、来年2~3回の利上げが市場のコンセンサスとなっている。だが、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは慎重だ。

◇世界GDP1・4%減

 

  年内2回の利上げは同じ予想でも、「来年1~3月で1回できるかどうか」と、河野氏は見る。つまり、できても来年第1四半期の1回で利上げは打ち止めという見立てだ。


  この要因として、河野氏は利上げを継続する過程で米国の株価や不動産などの資産価格が下落した場合、FRBが下支え役にされると見ているからだ。1970年代、莫大(ばくだい)な財政赤字を垂れ流すニクソン大統領(当時)に追随したバーンズFRB議長(同)をパウエル現議長にダブらせ、「利上げから緩和へと来年、方向転換する可能性がある」(河野氏)という。


  5月に米長期金利が節目の3%を超えてくると、ダウ平均や日経平均株価が調整する局面があったものの、米朝首脳会談の実現が濃厚になるという外交・安保上の融和ムードを好感して、市場は落ち着きを取り戻すという一進一退の膠着(こうちゃく)相場に移っていった(図)。


  こうした状況に新たな不確定要因として加わったのが、米中貿易戦争だ。トランプ政権は6月15日、知的財産侵害を理由に中国製品に制裁関税を発動すると発表。これを契機に米中の激しい応酬に発展し、貿易戦争の様相を呈し始めた。ダウ平均は6月19日、前日比287ドル下落し2万4700ドルに、日経平均も401円安の2万2278円に急落した。


  米中間選挙までトランプ大統領は中国にとどまらず、日本や欧州に対しても貿易戦争を挑んでくる可能性が否定できない。


  経済規模で世界最大の米国と2位の中国が本格的な貿易戦争に突入し、貿易や投融資の流れが停滞すれば、グローバル経済にマイナスの影響は避けられない。


  経済協力開発機構(OECD)の試算によると米国、欧州、中国の三極間で関税など通商の障壁引き上げで貿易コストが10%上昇した場合、世界の貿易量を6%、同GDPを1・4%押し下げる。

 


 (編集部)


週刊エコノミスト 2018年7月3日号

定価:670円

発売日:6月25日



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