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インタビュー:伊藤光晴 京都大学名誉教授 最後の書『ガルブレイス』 2016年4月5日特大号

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 ◇いとう・みつはる

 1927年生まれ。1951年東京商科大学(現一橋大学)卒業。東京外国語大学教授、千葉大学教授などを経て京都大学経済学部教授。近著には『原子力発電の政治経済学』『アベノミクス批判─四本の矢を折る』など。常に現実社会と向き合う書を送り出す。

 ◇「真に有効な政策とは何かを議論しよう」

 ◇米国社会の二極対立に映した経済学研究の本質

 

 伊東光晴・京都大学名誉教授が、『ケインズ』『シュンペーター』に続く三部作の『ガルブレイス』(岩波新書)を上梓した。アメリカを代表する“経済学の巨人”ジョン・ケネス・ガルブレイス(1908~2006年)にかりてアメリカ思想の二極対立をえぐり出す。最後の著書とした本書に秘めた思いを聞いた。

(聞き手=平野純一・編集部)

 

── 今回の『ガルブレイス』は、いつごろ書こうと思われたのですか。

伊東 ガルブレイスを書くという構想は20年以上前からありました。だから彼の主要著作は読んできました。私はこれまで、1962年に書いた『ケインズ』でイギリス論を述べ、続く93年の『シュンペーター』ではドイツ社会を考えました。そして、三部作としてガルブレイスを通じてアメリカ論を書きたいとずっと考えていました。


 私の師の一人である都留重人氏(1912~2006年)は存命中、私に「君はガルブレイスを書け」と言っていました。その約束を果たすという思いもありました。

 しかし、本当に書こうと決心したのは、2012年に病気で倒れた後に再び命を得てからです。最後の著書はガルブレイスにしようと決めました。そこでもう一度ガルブレイスを読み直し、執筆に集中したのです。

── 長い構想だったのですね。

伊東 20年以上前からというのは、こういうことです。1891年に創刊されたイギリスの『エコノミック・ジャーナル』が100周年の時に「経済学100年の歴史は何であったか。今後はどういう方向にいくだろうか」ということを問う特集を組みました。

 その編集段階の1990年ごろ、森嶋通夫氏(1923~2004年)が私に、「ケンブリッジ大学で一般均衡論をやっているフランク・ハーン教授が『物理学の大統一理論のような一元論で経済学を解く時代は終わった。これからは社会学を利用しながら個別的研究を行っていく時代だということをそこに書く』と言うんだ。私も書くのだが、伊東さんはどう考えますか」というわけです。

 私はその時に、これこそガルブレイスだと思いました。ガルブレイスは一般均衡論や新古典派を批判しました。ガルブレイスと逆のことをやっていたハーンも晩年はアメリカの新古典派批判、マネタリスト批判です。私はこの本の中で、「主流派経済学」という言葉は使わなかったし、ガルブレイスのことを「異端の経済学者」とも書きませんでした。

 

 ◇新古典派批判と通念への挑戦

 

── ガルブレイスの理論にある本質とは何でしょうか。………


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