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インタビュー 台湾EMS「新金宝」CEO サイモン・シェン氏

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◇東南アジア中心 世界20カ所に生産拠点

 

 鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収するなど、注目を集める台湾EMS(電子製品の受託製造)。新金宝(ニューキンポー)もその一角だ。来日したサイモン・シェンCEOに同社のEMS戦略や今後の有望分野を聞いた。(聞き手=種市房子・編集部)

 

 

||どんな会社か。

■1973年に設立して世界売上高は70億㌦(7000億円)。電卓やLED、プリンターなどの家電のほか、ハードディスクドライバー(HDD)や半導体など記憶媒体も受託生産している。特に外付けHDDの生産供給数は世界シェア1位だ。

  ||生産拠点は?

■東南アジアや中国大陸、ブラジル、メキシコなど世界に20カ所ある。台湾のEMSは言語や文化が近い中国に生産拠点を設けるケースが多い。しかし、当社は労働者の質や現地の規制などを総合的に考えて、28年前、海外初の拠点をタイに設けた。また、16年前には同様の理由でフィリピンに進出した。1996年には、中国にも進出したが、「世界の工場」としてではなく、あくまでも消費者が多いマーケットとして捉えているからだ。中国では7~8年前から人件費が高騰している。このため、他のEMSは中国の外に新拠点を作ろうと苦労している。一方で当社は既にタイやフィリピンの工場も育てており、リスクとはならなかった。

||なぜ成長したのか。

■たとえば、タイでは28年間HDDを顧客に提供し続けた。顧客の品質・コスト面での要求は厳しかったが、顧客との信頼関係を築き、要求に応え、技術を累積することで成長してきた。

 

◇日本は意思決定速度に課題

 

||日本の電機メーカーが不振に陥っている現状をどう見るか。

■日本の電機メーカーは技術力がある。しかし、意思決定のスピードや、ビジネスモデルを考える時の柔軟性には課題があるのではないか。

 

◇独自ブランドも展開

 

||3年前から独自ブランドも展開している。どのような製品を作っているか。

■3Dプリンター、LED照明を使った植物工場、IoT(モノのネット化)、ロボット、それに日本で今年から販売を始めた美容製品だ。たとえば3Dプリンターは、紙プリンターの受託生産で培った技術を使っている。これまでの技術を応用して新たなビジネスを生み出している。

||なぜ独自ブランドを展開するのか。

■顧客に「新金宝の技術を応用して新しいビジネスを始めましょう」と提案しても、賛同を得られないからだ。投資に見合う利益が上がるのか不安なのだろう。それならば一層のこと、ターゲットとなる市場に自分たちで特色ある商品を投入しようということになった。

||電機製品は商品サイクルが早い。次の成長分野は?

■AI、自動運転、ロボティックス、IoTなどだ。気を付けなければならないのは、これまでの経験を同じ考えでビジネスをしてはいけないということだ。AIエンジンは昨年から社内で開発中で、将来当社の製品に搭載したい。

||成長分野に挙げた領域には、GE、インテルなどのメーカー、グーグルやアマゾンなどのネット企業が名を連ねる。

■どんな大きい会社・商品でも消滅する可能性はある。私が駆け出しのころ隆盛をきわめた会社があったが、今、彼らのの製品はほとんど見ない。だから大きな会社の存在など気にしない。他社の規模がどうであれ、ビジネス内容が競合しないマーケットを見つけるのが大切だ。

 

サイモン シェン(沈 軾栄)

 1998年、南カリフォルニア大MBA取得、2001年ウィッターロースクール修了。米国での弁護士活動を経て、08年新金宝グループCEO。50歳。


第48回 福島後の未来:発電施設導入の総合評価で消費者の負担適正化を=荻本和彦 

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1956年福岡県生まれ。東京大学工学部電気電子工学科卒業。79年に電源開発(Jパワー)に入社し、直流送電、電力系統解析、太陽光発電・風力発電などの技術研究開発、技術戦略などに従事。2008年から東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター特任教授。
1956年福岡県生まれ。東京大学工学部電気電子工学科卒業。79年に電源開発(Jパワー)に入社し、直流送電、電力系統解析、太陽光発電・風力発電などの技術研究開発、技術戦略などに従事。2008年から東京大学生産技術研究所エネルギー工学連携研究センター特任教授。

荻本和彦・東京大学生産技術研究所特任教授

 

日本のエネルギー政策は残念ながら、消費者に恩恵をもたらす(1)安価なこと(2)安定的なこと(3)持続可能であること──という三つの原点がなおざりにされがちだ。というのも、政策を決定する場でエネルギー供給側の影響力が強すぎ、消費者の本当の利益を代表できる議論が少ないからだ。この三つの原点を踏まえないと結局、消費者は電気料金や賦課金などで過剰な負担を強いられる。

 

 消費者側が適切な負担でエネルギーを得るための方策はあるのか。

 

 

 インテグレーションスタディー(新たな発電施設と運用対策導入に関する総合評価)を用いれば、三つの原点から離れることなく、電源導入による社会全体のコスト負担や影響を解析できる。インテグレーションスタディーとは、発電した電気が消費者に届けられるまでに必要なあらゆるコストや安定供給の影響を導き出す考え方だ。ある電源を導入する場合、土地代などを含めた設置コストのほか、その地域の送電系統網への新たな投資額など、発電事業者の負担だけでなく社会全体での負担も試算する。

 

 

 例えば、ある地域に100万キロワットの風力発電所を設置するとしよう。発電所の建設・運用費用だけでなく、接続する送電系統網の増強が必要な場合は全体の増強費用を試算し、送電増強費を一部負担することになる。その地域の住民の電気料金への上乗せ額や、想定する投資回収期間などあらゆる試算を数値化する。また大都市の電力消費地と、設置する発電所との距離が遠くなるごとに、送電線の整備費用がどの程度増えていくかなどを明らかにする。個人の金融に例えると、マンションなどの住宅を購入するうえで、20~35年間の住宅ローンの返済計画をシミュレーションして、一番現実的な物件購入を選択するようなものだ。

 

インテグレーションスタディーで発電施設と運用対策の費用、安定供給、環境性の試算を定量化することで、電源を新たに導入する地域の送電系統網内の各種電源の供給・余剰能力や電力の需給調整能力、さらに地域ごとに特有の送電系統網の運用状況など、さまざまな条件を極力精緻に反映し、将来にわたる経済性や供給の安定性の分析と評価が可能となる。

 

 

 元々、総合評価は、欧州で再生可能エネルギーの導入を検討する試算から始まった。最近では需要を調整するデマンドレスポンスや電気自動車(EV)の蓄電池活用など、新たな技術を反映した場合の試算などを積極的に取り入れている。

 

 ただ現状をみると、政府、消費者、エネルギー企業などあらゆる関係者は発電施設と運用対策導入に伴う総合評価の重要性を理解していない。評価を実施できる人材も、エネルギー分野の研究者のごく一部に限られており、実行されていない。今後の政策決定は、どの部門の関係者も総合評価を活用して、安定供給、社会全体の負担、環境性など客観的な数値に基づいた提言を展開していくことが不可欠であり、ファイナンシャルプランナーのような人材を育成する必要がある。

 

 中でも、送電系統網の整備は総合評価をするうえで大きな要素となる。しかし、日本は10電力会社体制による地域独占の状態であったため、欧州と比べると電力会社間をまたいだ地域間連係が脆弱(ぜいじゃく)で、幅広い送電系統網の運用ができていないといわれている。いわば各電力会社を細い送電系統で結ぶ「串団子」のような形態だ。

 

 背景には、各地域の電力会社が管内での電力の安定供給を図って築き上げた歴史的な供給構造がある。日本の送電系統網は明治時代、山間の水力発電所で製造した電気を東京、大阪、名古屋などの大都市に供給することから始まった。当初の発電源は水力が主要で、火力発電が追随する水主火従だった。戦後、大消費地に近い港湾地域に火力発電所が次々と建設され、さらに原子力発電所の建設が進むにつれて、管内の送電線も整備されていった。その一方で各エリアが必要な電源を確保する原則を踏襲したため、地域間の送電系統の整備は一定水準となった。

 

 ◇脆弱な日本の送電系統網

 

 しかし送電容量が限られるからといって、東日本と西日本を一体とするには莫大(ばくだい)な費用がかかるばかりで現実的ではない。総合評価すると送電系統網の拙速な統合は経済性がよいとはいえない。例えば北海道では、地域全体の電力の需要と供給が一致しにくくなっていることから、風力発電の送電系統網への系統制約が生じている。ただ、系統制約を解消するために、北海道で発電した電力を大消費地の東京まで運ぶには、莫大な送電系統網の増強が必要となり、結局、税金か電気料金により負担は消費者に跳ね返ってしまう。

 

 また、長距離の送電網は、安定面からいえば、地域間をまたぐ大停電を引き起こす問題も考えられる。そもそも欧州は長い歴史の中で今の碁盤状の送電系統網になっていった。日本も長い歴史の中で串団子型になった。

 

 現実的な解決策を探るには、発電施設の配置を含めた総合評価が必要となる。大事なのは、できるだけ消費地の近くに電源をつくり、すでにある設備を有効活用することだ。そうすれば社会全体の負担を抑えることができる。

 

 ◇再生エネでも活用可能

 

 総合評価によって導き出される方策には、廃炉に伴って使われなくなる送電系統網の活用がある。東京電力福島第1原発の廃炉に伴い、福島県阿武隈地域に大型陸上風力発電所をつくって、既設の送電系統網を使えるので、系統制約の問題は起こりにくい。

 

 このほかに、原子力規制委員会は4月19日、4原発5基の廃炉を決定した。いずれも1970年代に運転を開始し、稼働してから40年たっている。また福島原発事故より前に廃炉が認められた中部電力浜岡原発1、2号機(静岡県御前崎市)や日本原電東海原発(茨城県東海村)などでは廃炉作業が進んでいる。

 

 日本の廃炉時代が本格的に始まっている。廃炉となっても数百万キロワットの電気を大消費地に送るために整備した強靭(きょうじん)な送電線は健在だ。今後、このように原発の廃炉に伴って空きが生じる送電線を再生エネルギーなどの新たな電源に有効活用するのも選択肢の一つだ。

 

(荻本和彦・東京大学生産技術研究所特任教授)

魅惑のラブドール 実用から癒やし求める人まで

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ダッチワイフもシリコン製のドールの登場で人間と見まごうばかりのレベルに達した。

国内トップメーカーの展覧会を訪ねた。

 案内の女性から渡されたウエットティッシュで手をふいてから、おずおずと触ってみた。──おお、柔らかい。腕、腹、太ももなど部位によって柔らかさが微妙に違う。シリコン製の皮膚は冷たくもなく、さらっとしていて、肌触りは人間に近い。胸は他の部位に比べると、一段と柔らかい。シリコンの下にゲルが入っているという。

 

 東京・渋谷のギャラリー「アツコバルー」で5月20日から6月11日まで「今と昔の愛人形」展が開催された。ダッチワイフ製造の最大手、オリエント工業(東京・上野)の創立40周年を記念したイベント。近年はダッチワイフでなく、ラブドールという名称が広まっている。

 会場では歴代のドールや製造工程を示した写真パネルなどを展示。記者が訪れたのは平日の昼間だったが、男性だけでなく、若い女性がスマートフォンで写真を撮ったり、外国人が食い入るように見つめていたり、静かな熱気にあふれていた。会期中、1万人以上が訪れ、そのうち約6割は女性だった。

 

 記者が触れた最新型ドールの価格は1体約70万円。オプションとして、アンダーヘア、皮膚にうっすらと見える血管メーク、手の指を動かせるようにする骨格などがあり、こうしたものを付けると総額80万円を超える。しかし、高額商品にもかかわらず、年間400体が売れる。

 かつてのダッチワイフは、ビニールでできた浮き輪のような空気式で、使用中に空気が漏れるのが課題だった。オリエント工業が1977年に発売した第1号の「微笑(ほほえみ)」は、腰の部分に軟質ウレタンを入れるなど工夫し、商品の改良を進めた。2001年には初めてシリコンを使い、爆発的に売れた。

初期のドールはマネキンに近い(第2号の「面影」)
初期のドールはマネキンに近い(第2号の「面影」)

 購入者は妻と離婚や死別した中高年、あるいは身体的な障害があって性の悩みを抱えた人などが多かった。それが商品の進化とともに若い人も買うようになった。

 

 土屋日出夫社長(73)は「実用だけでなく観賞用として買う人が増えてきた。しゃべる相手がいないと寂しいでしょう。ドールに声をかけるだけで癒やされる人がいる」と話す

オリエント工業の土屋日出夫社長(左)
オリエント工業の土屋日出夫社長(左)

 ドールの活躍の場も広がっている。例えば、昭和大学歯学部などと共同開発した臨床実習患者ロボットは、歯科医学生の実習の現場で使われている。また、裁判員裁判で事件を再現する際、臨場感を出すために使われることもあるという。今後、ドールはどこへ向かうのか。

 

「ドールが話したり、自分から動いたり、機械的にならないようにしようと思っている」と土屋社長は言う。「人工知能などを搭載することは全く考えていない。購入者が魂を入れるわけだから。それよりむしろ、今より価格を下げて買いやすくしたい」

(花崎真也・編集部)*『週刊エコノミスト』2017年6月27日号掲載

一瞬、人間かと思ってしまう
一瞬、人間かと思ってしまう
製造工程がパネルで紹介されている
製造工程がパネルで紹介されている

ドールを購入者に渡す時は、一体一体に指輪を着けて「嫁入り」させる。購入者が手放すときはオリエント工業に「里帰り」させることも可能だ
ドールを購入者に渡す時は、一体一体に指輪を着けて「嫁入り」させる。購入者が手放すときはオリエント工業に「里帰り」させることも可能だ

特集:AIで増えるお金と仕事 2017年6月27日号

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ウェルスナビのデモ画面
ウェルスナビのデモ画面

◇誰でもAIで“賢い”投資家

◇ロボアドバイザーが自動で運用

 

稲留正英(編集部)

 

AIがお金の世界を「民主化」しようとしている。ファイナンシャルプランナー(FP)やファンドマネジャーなどの金融専門家の能力をAIに置き換え、富裕層しか受けられなかった金融サービスを一般のサラリーマン層や若年層に提供しつつある。

 

 「運用開始以来の利回りは年率4~5%。英国のEU離脱の影響で、一時、利回りはマイナスになる場面もあったが、その後は安定的に推移している」──。都内に住むITエンジニアの徐聖博さん(28)は満足そうに語る。徐さんは友人の紹介で、2016年2月から、金融ベンチャー企業「お金のデザイン」が提供するロボット・アドバイザー(ロボアド)サービス「THEO(テオ)」を使い始めた。

 

 ◇月1回自動で見直しも

 

 テオの利用方法はシンプルだ。パソコンやスマホのアプリで、テオの画面を開くと、無料相談のページが出てくる。画面の指示に従って、(1)年齢、(2)投資経験、(3)元本重視の度合い、(4)値下がり時の対応、(5)インフレへの対応──の五つの質問に答えると、国内外の株式、債券、商品の配分比率を示した推奨ポートフォリオが表示される。そのままサービスを受けたければ、口座開設・投資一任勘定の契約をネット上で結び手続きは完了する。手元に必要なのは免許証などの身分証明書とマイナンバーだけだ。

 

 契約後は、テオが基本ポートフォリオに沿って自動的に30~40銘柄の米国上場のETF(上場投資信託)の中から最適な組み合わせを購入し、月に1回、リバランス(資産の再配分)を行う。手数料は運用資産残高に対して1%。ETFの買い付けコストや信託報酬はすべて含まれる。

 

 徐さんがテオに興味を持った背景には、既存の金融機関への不満があった。銀行でドル建て預金をしていたが、金利はわずかに0・2%。ネット証券で投資信託を購入したが元本割れに。日本株にも取り組んだが、塩漬け状態だ。徐さんはこれから結婚や家購入の資金づくりに投資を活用しようと考えている。

 

 都内のコンサル会社に勤める宮本敬史さん(38)さんは、半年前から金融ベンチャー「ウェルスナビ」が提供するロボアドサービスを利用している。過去10年間、株式や投資信託への投資をしてみたがうまくいかず、「金融機関に手数料だけとられていた」という。宮本さんは、ウェルスナビでは5段階中で上から4番目のリスクを取っているが、これまでの運用利回りは年率3~4%だ。「投資が分散しているので、個別株式に比べると安心感がある」と説明する。

 

 この1年、英国のEU離脱や米トランプ大統領就任などの波乱要因があったにもかかわらず、テオやウェルスナビの収益が安定しているのは、資産運用の基本とされる「投資対象と期間の分散」の法則に従っているからだ。この手法は、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)をはじめ、世界の機関投資家が採用している。複数の投資対象に時期を分けて投資することで、リスクを減らして長期的な安定を目指すやり方だ。

 

 ◇ゴールを設定して投資

 

 AIが代替しているのは、運用面だけではない。ロボアドはPCやスマホを使って、従来のFPや証券外務員などの役割も担っている。

 

 エイト証券やマネックス・セゾン・バンガード投資顧問などは、ロボアドで「ゴールベース投資」機能を提供している。例えば、顧客が「40歳までに家を買いたい」とゴールを設定すれば、そのゴールを達成するために、顧客のリスク許容度に応じて、どのタイミングでどんな投資をしていけば良いかアドバイスする。

 

 ポイントはAIが学習機能を持っていることだ。さまざまな顧客の事例が集まるほど、それぞれの顧客向けにより精緻にカスタマイズしたアドバイスが可能になるという。マネックス・セゾン・バンガードでは、将来、米アマゾンの「エコー」のような自然言語認識スピーカーで資産運用の相談に応じることも考えている。

 

 大手銀行や証券、投資信託会社は現在、人を介して投資信託の運用を一任する「ファンドラップ」サービスを提供している。営業マンやFPが資産運用の相談に乗りながら顧客に投資信託を販売する。しかし、対象顧客は金融資産を数千万円以上持つ層で、最低投資金額は通常1000万円以上。手数料も販売手数料と運用商品の信託報酬を合わせ2~3%と高く、一般のサラリーマン向きとは言えなかった。

 

 それに対し、ロボアドの最低預かり金額は1万円、手数料も税込みで1%前後だ。加えてスマートフォンで操作できることも、若い世代の関心を引いた。

 こうした動きを受け、15年10月には、みずほ銀行がメガバンクでは初めてロボアド市場に参入し、その後、ベンチャーだけでなく既存金融機関の参入が相次いでいる。米調査会社のアイテ・グループによると、日本のロボアド市場は、16年の預かり資産残高3億ドルから、20年には103億ドルまで急拡大する可能性があるという。

 

 野村総合研究所の城田真琴・上級研究員は今後、ロボアド市場は、「単なる分散投資から、税金対策、不動産、保険、ローンまでアドバイス範囲が拡大する」と予測する。米金融事情に詳しいマネーフォワードの瀧俊雄取締役フィンテック研究所長は、「米国ではTotum Wealthなど、その人の健康状態や居住地域、働く業種なども吟味したアドバイスを提供する金融ベンチャーも誕生している」と話す。

 

 ◇ファンド運用者に代わる

 

 さらに、AIは人間のファンドマネジャーの能力を超えようとしている。

 

 三菱UFJ国際投信が2月に設定した「AI日本株式オープン」は、AIを使って、これまで日本市場で難しかった「絶対リターン」を追求する点が特徴だ。1990年のバブル崩壊以降、日本の株式市場はさえない展開が続き、従来の運用手法ではプラスの投資収益を得るのはなかなか難しかった。そこでAIを使い、人間では今まで気付くことができなかったデータを集めて分析することで、低迷する市場でもプラスのリターンを得ようと試みている。

 

 具体的にはまず、AIで高配当・安定配当などの個別銘柄を抽出する。その際、証券取引所の適時開示システムやブルームバーグ通信が配信するニュース記事など膨大な情報から、数値と文字データを読み取る。例えば悪材料で株価が下げている銘柄でも、悪いニュースが減ってきたら株価が反転するタイミングが近いとして買いを入れる。今のところ読み込むのは数値と文字だけだが、将来的には画像や音声データも取り込めるようにする。

 

 英国の欧州連合(EU)離脱や米トランプ大統領の当選などのイベントの際もAIが過去のデータを基に学習し、売りか買いか判断し、それを基に株価指数先物を売買して利益をあげる。AIには深層学習機能が備わり、自ら学習して今の運用手法が適切かどうかを考え、必要な場合は新たな運用手法を生み出すという。

 

 検索大手ヤフー系列のアストマックス投信投資顧問が昨年12月に運用を始めた「Yjam(ワイジャム)プラス!」は、ヤフーの別のグループ会社が構築したAIモデルを使って、ヤフーが保有するビッグデータの解析結果を運用に生かす。国内外の銘柄を対象に、投資家の注目度の変化などから将来の「スター銘柄」を発掘する点が特徴だ。

 

 金融サービス会社のフィスコは、1月からAIを使った個別銘柄の株価予測サービスを開始した。この特徴は、AIを活用することでアナリストの銘柄選定にかける時間が3~5割減ったことだ。投資テーマは20以上、対象銘柄は1000以上に及ぶが、銘柄選定にかける時間が減ったことで、アナリストがより深い分析に時間を割くことができるようになったという。

 

 米国ではAIを使って運用するヘッジファンドがすでに巨額の資金を集めている。日本でも、AIを使った運用手法が存在感を強めることになりそうだ。

(稲留正英・編集部)

週刊エコノミスト 2017年6月27日号

定価:620円

発売日:2017年6月19日


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目次 2017年6月27日号

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AIで増えるお金と仕事

第1部 マネー編

18 誰でもAIで“賢い”投資家 ロボアドバイザーが自動で運用 ■稲留 正英

21 ロボアドに集まる人材

22 投資先を探す 米大富豪の保有株情報 ■益嶋 裕

24 AIで上昇期待の株 投資信託

第2部 仕事編

26 AIで500万人の雇用創出 ■白戸 智

28 AIで無くなる仕事、残る仕事200 ■上田恵陶奈

30 自動運転社会 クルマは「ポッド」など3種類に ■中野 大亮

31        地位揺らぐバス・鉄道

32 AIとシェアリング 空間、乗り物、身の回りを「共有」 ■村山 誠

34 変わる製造現場 品質向上や新素材発見に威力 ■百嶋 徹

36 ドイツ労組 「製造のデジタル化」に積極関与 ■熊谷 徹

38 高齢者に寄り添う 新たな市場と雇用を創出 ■小川 高志

 

エコノミストリポート

82 英総選挙で保守党「敗北」 メイ首相「野党の協力」も勇み足 EUに足元を見られる離脱交渉 ■石野 なつみ

 

Flash!

11 東電・小早川新社長が会見/円とアジア通貨の直接交換市場/パリ協定から米国離脱/カタール断交で日本のタクシーが止まる

15 ひと&こと アマゾンとの交渉で強気のヤマト/杉田官房副長官の後任選び/環境次官は文系か理系か

 

Interview

4 2017年の経営者 吉田 淳一 三菱地所社長

44 問答有用 ロギール・アウテンボーガルト 手すき土佐和紙作家

「自作の原料ですいた天然和紙が一番です」

 

通訳なんていらない? 自動翻訳

76 ほぼリアルタイムが実現 「言葉の壁」下げる新製品 ■池田 正史

77 グーグル翻訳を浅草で使ってみた! ■編集部

79 仕組みと歴史 「統計型」から「神経回路型」へ ■隅田 英一郎

81 やっぱり人にはかなわない プロに聞く自動翻訳の実力

産業分野 二宮 俊一郎 翻訳センター取締役 「翻訳者の仕事はなくならない」

映画字幕 菊地 浩司 ACクリエイト会長 「日常会話やスラングは不得手」

 

68 制度 ムダに眠る力をよみがえらせる ■坂井 豊貴

71 合法化 「大麻の解禁州」相次ぐ米国 ■西村 由美子

72 焦点 NAFTA再協議 ■足立 正彦

74 美容 シワが伸びると株価も伸びる ■種市 房子

85 愛情 精巧なラブドール ■花崎 真也

 

World Watch

58 ワシントンDC 対北朝鮮ミサイル防衛 ■会川 晴之

59 中国視窓 強化された不良債権対策 ■神宮 健

60 N.Y./カリフォルニア/英国

61 オーストラリア/インド/フィリピン

62 香港/ロシア/イスラエル

63 論壇・論調 数字が証明する長期停滞論 ■岩田 太郎

 

Viewpoint

3 闘論席 ■池谷 裕二

17 グローバルマネー 下落に転じた北京・住宅価格の綱渡り

39 商社の深層(73) 「食糧資源」ビジネスに集まる期待 ■五十嵐 雅之

40 海外企業を買う(145) フィリップ・モリス・インターナショナル ■児玉 万里子

42 名門高校の校風と人脈(245) 首里高校(沖縄県) ■猪熊 建夫

48 学者が斬る 視点争点 徳川吉宗が教える「働き方改革」 ■横山 和輝

50 言言語語

64 アディオスジャパン(57) ■真山 仁

66 東奔政走 憲法「9条の2」新設の可能性 ■佐藤 千矢子

92 景気観測 景気後退リスクは中国よりも米国 ■枩村 秀樹

94 ネットメディアの視点 官房長官に食い下がる畑違いの記者 ■山田 厚史

96 アートな時間 映画 [ラスト・プリンセス ─大韓帝国最後の皇女─]

97        クラシック [野島稔ピアノ・リサイタル]

98 ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ経済英語 “ Mixed-Ownership Economy ”

 

Market

86 向こう2週間の材料/今週のポイント

87 東京市場 ■三井 郁男/NY市場 ■針谷 龍彰/週間マーケット

88 ブラジル株/為替/穀物/長期金利

89 マーケット指標

90 経済データ

 

書評

52 『変態する世界』

『人民元の興亡』

54 話題の本/週間ランキング

55 読書日記 ■楊 逸 

56 歴史書の棚/海外出版事情 中国

 

51 次号予告/編集後記

 

「丸の内の大家」から世界へ 吉田淳一 三菱地所社長

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Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 オフィスビル、マンション開発大手。2017年3月期の連結営業利益は前年比15・8%増の1925億円で過去最高を更新した。米国、アジアを中心とした海外展開にも力を入れ始めている。

 

── 4月、社長に就任しました。

 

吉田 トップになるとは思っていなかったので、責任の重さをひしひしと感じています。先行き不透明な時代なので、単純な拡大よりも10年後、20年後に会社を支えていく人たちが、自分たちの問題として考えていくことができる環境をつくることが私の役目だと思っています。責任感を持って成し遂げる人に任せていきたいです。

 

── 三菱地所はどんな会社ですか。

 

吉田 明治期に三菱2代目社長の岩崎彌之助が丸の内にあった陸軍の練兵場を購入し、オフィス街をつくろうと開発を始めたのが当社のルーツです。1894(明治27)年に「三菱一号館」が竣工しました。

 現在は、丸の内を中心とした街づくりと、オフィスビルに限らず、アウトレットモールをはじめとした商業施設や物流施設、そしてマンションも手掛け、生活・暮らしに関するすべてのことを扱っています。売り上げ(営業収益)に占める比率は、ビルが全体の43%、住宅が36%です。

 

── 丸の内は東京駅と皇居をつなぐ日本の表玄関です。

 

吉田 丸の内の街づくりは、日本一、東洋一、世界一の街をつくっていくというやりがいや責任感、高い志を持って挑むのにふさわしいプロジェクトだと思っています。

 街づくりでは、長期的視点に立って地域全体で付加価値を高めることを大切にしています。もうかる収益構造を追求する企業もありますが、街を良くすることを大事にするのも重要。これは丸の内以外のプロジェクトでも同様です。

 

── 新しい中期経営計画を発表しました。

 

吉田 20年3月期に営業利益2200億円を目標に掲げました。どんなに社会が変化しても、営業利益で2000億円を安定して稼げる会社にしたいという思いを込めています。やみくもに規模の拡大を追うよりも、三菱地所がやることに価値があるという事業に集中して取り組んでいきたいと考えています。

 

── 中期経営計画では空港のコンセッション(運営の民営化)も今後の事業の一つに加えています。

 

吉田 ぜひやりたい事業の一つです。インバウンド需要を増やすために我々ができることはいろいろあります。単純にハードとして商業施設をつくるだけではなく、文化や伝統を含めた日本の魅力を知っていただく仕掛けを考えています。

 

 ◇ミャンマーで駅前開発

 

── 今後のプロジェクトは。

 

吉田 東京駅そばで進める「常盤橋街区再開発」が最大のプロジェクトです。丸ビルが三つ入る3・1ヘクタールの広大な敷地に、2棟の超高層ビルを建てます。そのうちの一つは、日本一高い約390メートルのビルで、東京を代表するシンボルになります。また再開発によって地上のスペースが広がります。東京駅前の開かれた空間を人の交流の場にして、国際金融拠点として、あるいは新しい企業が生まれていく場としてシンボリックな場所にしたいと考えています。

 

── ビル・マンションの業績は。

 

吉田 丸の内の空室は極めて少ない状況です。丸の内、八重洲、日本橋など再開発を通じて新陳代謝がはかられている地域は新しいテナント需要も伸びていくと考えられるので、新築ビルが開業して貸し付け面積が多少増えても大きな影響はありません。

 住宅は全体として新築マンションの供給戸数が減りつつある中、安心できる企業から買いたいという需要を取り込み、不動産大手のシェアが拡大すると見ています。

 

── 将来の金利上昇をどう見ていますか。

 

吉田 できる限り影響を受けない形で事業を進めていきたいです。期間の長い社債の発行などで借入金利を長期固定化するなど、現在の低金利環境を活用する取り組みを進めています。16年に発行した期間40年の普通社債は、表面利率が0・789%でした。また、新たに土地を取得して開発する事業だけでなく、長期的な視点で進める再開発事業にも取り組むなど、全体として資金運用のバランスに気を配っています。

 

── 海外事業は。

 

吉田 力を入れているのは米国とアジアです。米国は、現地子会社のロックフェラーグループ・インターナショナルがニューヨーク州マンハッタンに保有するビルの大規模リニューアル工事を実施中です。買収した投資マネジメント会社を通じて投資したり、既存のビルの収益性を高める投資をしていきます。

 

── アジアはどうでしょうか。

 

吉田 ミャンマーで三菱商事とともにヤンゴン中央駅周辺の開発に取り組んでいます。長期的には丸の内のような開発をしたいとの思いがあります。

 

── 本社を移転しますね。

 

吉田 下期に「大手町パークビル」に移転するのを機に、自由な発想で仕事に取り組めるオフィスにしたいと考えています。中心に階段を設けるなど部署を超えてコミュニケーションをとれるスペースをつくる一方で、各人が仕事に集中できるスペースもつくるなど、新しい働き方に適したオフィスを検討しています。

(構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 東京・広尾などでマンションを担当した後、札幌郊外でニュータウン開発に携わりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 米沢藩主・上杉鷹山に関する本です。制度の壁、心の壁に現場主義で立ち向かう鷹山の人物像に引かれます。

 

Q 休日の過ごし方

 

A ペットの犬と遊んだり、テレビでスポーツ観戦をしたりしています。

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 ■人物略歴

 ◇よしだ・じゅんいち

 1958年福岡県生まれ。愛知県立旭丘高校卒業。82年東京大学法学部卒業後、三菱地所入社。人事部長、ビルアセット業務部長を経て2014年に常務執行役員、16年に取締役を兼任。17年4月から現職。59歳。

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事業内容:オフィスビル・商業施設・住宅等の開発、賃貸、管理

本社所在地:千代田区大手町

設立:1937年5月

資本金:1418億円

従業員数:8642人(連結)

業績(17年3月期・連結)

 売上高:1兆1254億円

 営業利益:1925億円

週刊エコノミスト 2017年6月27日号

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定価:620円

発売日:2017年6月20日

 

AIで増えるお金と仕事

 

◇誰でもAIで“賢い”投資家

  ◇ロボアドバイザーが自動で運用

 

 AIがお金の世界を「民主化」しようとしている。ファイナンシャルプランナー(FP)やファンドマネジャーなどの金融専門家の能力をAIに置き換え、富裕層しか受けられなかった金融サービスを一般のサラリーマン層や若年層に提供しつつある。

「運用開始以来の利回りは年率4~5%。英国のEU離脱の影響で、一時、利回りはマイナスになる場面もあったが、その後は安定的に推移している」──。都内に住むITエンジニアの徐聖博さん(28)は満足そうに語る。続きを読む


目次:2017年7月4日号

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認知症に克つ

18 2025年高齢者5人に1人 「人類最大級の病」に ■花谷 美枝/村上 和巳

認知症市場で稼ぐ参入企業の戦略 ■花谷 美枝

22 JCRファーマ 脳の「関門」突破の新技術

23 ジンズ センサー付き眼鏡

24 ツムラ 「抑肝散」/太陽生命、朝日生命 認知症保険

26 エーザイ 地域連携戦略 ■村上 和巳

27 「アリセプト」開発者も注目する「タウたんぱく質」仮説 ■渡辺 勉

28 米投資家が熱視線 国際共同研究「DIAN」 糖尿病の人は危険率2倍 ■渡辺 勉

29 インタビュー ブッチー 武者 「認知症介護殺人」を舞台化

30 イチから学ぶ 認知症 Q&A ■高野 聡

32 認知症チェックリスト付き 誤診続出、診療体制追い付かず ■村上 和巳

34 成年後見制度 親族間の対立が不正問題に発展 ■渋井 哲也

36 関連銘柄31 創薬から介護まで ■繁村 京一郎

38 施設選び 認知症に寄り添う多世代共生住宅 ■畑川 郁江

 

40 宇宙ビジネス1 参入相次ぐ低軌道衛星通信ビジネス ■石田 真康

42 宇宙ビジネス2 宇宙資源開発ルールで米中露が火花■水島 淳/根本 拓

74 FRB 利上げでも低いままの長期金利が新たなバブル醸成か ■永井 靖敏

89 スクープ オリンパス粉飾「指南役」 逮捕起訴の証拠に疑義 ■編集部

 

Flash!

11 都議選対策でしかない小池知事の築地・豊洲両市場の活用/法的整理に追い込まれたタカタ創業家/アマゾン「スーパー買収」の衝撃/欧州統合導いた巨星・コール元独首相死去

15 ひと&こと 「医療界のプリンス」の働き方改革に医療界反発/モバイル決済後進国は、全銀協の会長行制度の弊害/ロボアド合同説明会に17社が集結

 

Interview

4 2017年の経営者 高松 富也 ダイドーグループホールディングス社長

48 問答有用 水谷 徹 脳神経外科医 「命を救った患者さんの感謝が何よりの喜び」

 

やるなら肉食系投信

81 過去10年の好成績投信ランキング ■荒木 宏香

84 6つの基準 アクティブ投信の選び方 ■鈴木 雅光

異色の投信会社に問う

86 さわかみ投信社長 澤上 龍

87 セゾン投信社長 中野 晴啓

88 レオス・キャピタルワークス社長 藤野 英人

 

ブラック保育園を増やすな

90 経験乏しい若手のみの修羅場 保育士に「人件費」が回らない ■小林 美希

93 園児見失い告発は「風評被害」か ■南野 彰

94 保育園に「親の力」「専門家の目」 質を保つ仕組みを海外に学ぶ ■池本 美香

96 年金・医療・介護で「子育て基金」 老後を左右するのは次世代 ■権丈 善一

 

エコノミスト・リポート

78 インターバンク取引減少 中国の市場金利が上昇 銀行規制強化で経済に悪影響も ■矢作 大祐

 

World Watch

66 ワシントンDC 保守・主流間の対立根深く 議会共和党の憂鬱 ■堂ノ脇 伸

67 中国視窓 難しいリストラの現場 法定の補償金では足りず ■前川 晃廣

68 N.Y./シリコンバレー/英国

69 韓国/インド/ミャンマー

70 成都/コロンビア/南アフリカ

71 論壇・論調  総選挙後の英国が悩む内憂外患 EU離脱交渉難航、国内経済悪化 ■増谷 栄一

 

Viewpoint

3 闘論席 ■片山 杜秀

17 グローバルマネー 「出口」戦略として完璧なFRB

39 商社の深層(74) インドの貨物専用鉄道建設 双日、三井の期待と誤算 ■花谷 美枝

44 名門高校の校風と人脈(246) 角館高校/湯沢高校(秋田県) ■猪熊 建夫

46 海外企業を買う(146) ネスレ ■小田切 尚登

52 学者が斬る 視点争点 廃棄物費用把握で環境負荷削減 ■西谷 公孝

54 言言語語

72 アディオスジャパン(58) ■真山 仁

76 東奔政走 曖昧さが残る「共謀罪」法成立 政権の所業は「説明放棄」に等しい ■前田 浩智

104 景気観測 米国のインフレ鈍化が続けば、金融引き締めは9月には止まる ■足立 正道

106 ネットメディアの視点 「アニメ王国」日本はIT周回遅れ 最高賞生んだソフトとスペイン人 ■土屋 直也

108 アートな時間 映画 [ハクソー・リッジ]

109        舞台 [イヌの仇討]

110 ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ経済英語 “ Volatility Index ”

 

Market

98 向こう2週間の材料/今週のポイント

99 東京市場 ■藤戸 則弘/NY市場 ■佐々木 大樹/週間マーケット

100 欧州株/為替/原油/長期金利

101 マーケット指標

102 経済データ

 

書評

60 『超一極集中社会アメリカの暴走』『保育園問題』

62 話題の本/週間ランキング

63 読書日記 ■荻上 チキ 

64 歴史書の棚/出版業界事情

 

59 次号予告/編集後記

 


週刊エコノミスト 2017年7月4日号

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特別定価:670円

発売日:2017年6月26日

 

認知症に克つ 

 

2025年高齢者5人に1人 

「人類最大級の病」に

超高齢化時代を目前に、日本は認知症という重大な問題に直面しようとしている。認知症の国内患者数は462万人(2012年、推計値、20ページ図2)で、25年には約700万人に増加すると予想されている。この時、65歳以上の高齢者に占める割合は現在の7人に1人から、5人に1人へと上昇する。

 認知症は、社会的、経済的に深刻な影響をもたらす点が、他の病気と大きく異なる。特効薬のない認知症は、在宅または施設での継続的な介護が必要になるためだ。

 国際アルツハイマー病協会によると、世界の認知症患者数は15年の4680万人。認知症の治療や介護にかかるコストは、15年の8180億ドル(約91兆円)から、18年には1兆ドル(約111兆円)を超えるとの推計もある。認知症は「人類社会を滅ぼす病」と言える。続きを読む


自販機網を生活者のインフラに変える 高松富也 ダイドーグループホールディングス社長

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Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── ダイドーと言えば缶コーヒーで有名です。

 

高松 当社は、祖父の高松富男が、戦後すぐに奈良県で置き薬の販売を始めたことが創業のきっかけです。1956年に大同薬品(現大同薬品工業)を設立後、医薬品の製造・販売を行ってきましたが、70年代に入って新規事業として飲料事業を開始、これが現在のダイドードリンコです。当時缶コーヒーが世の中に出始めた頃で、当社も初の缶コーヒー「ダイドーブレンド」を発売しました。現在まで続くロングセラー商品となっています。その後自販機で飲料の販売を開始して以降、自販機を中心に販路を広げてきました。

 

── ロングセラーの秘訣(ひけつ)は。

 

高松 ダイドーブレンドを開発した当時から、香料を使わず多種多様な豆を多く使用して、いかに本物の味わいを再現するかにこだわり続けてきました。常に焙煎(ばいせん)メーカーから情報を収集し、世界中から良い豆を買い付けています。

 

── 費用もかさむのでは。

 

高松 当社の強みとして、製造工場を持たないファブレス(外部の協力企業に委託)方式で長く運営していることがあります。設備投資に莫大(ばくだい)なコストをかけることがないため、製品開発と自販機の展開に経営資源を集中できるのです。

 

── 事業の柱を教えてください。

 

高松 当社の事業ポートフォリオは、売上高で国内飲料事業が75%、海外飲料事業が10%、医薬品の受託製造を行う大同薬品工業が5%、食品関連事業のたらみが10%となっており、国内飲料事業では約8割が自販機の売り上げです。

 足元では、当社の主力商品のボトル缶コーヒー「世界一のバリスタ」や、当社初の機能性表示食品「大人のカロリミット はとむぎブレンド茶」の売れ行きが好調で、2017年2~4月期の連結決算の売上高は、前年同期比1・9%増の389億円と堅調に推移しています。

 

── 海外展開は。

 

高松 海外飲料事業は、現在トルコ、マレーシア、ロシア、中国に展開しています。特に売り上げに貢献しているのは、昨年トルコの食品大手ユルドゥズ・ホールディングス(HD)から買収した飲料事業です。現状は、ユルドゥズHDの商品を基本に展開していますが、既に現地で販売する缶コーヒー開発も進めており、いずれは新商品を発売する予定です。

 

── 他の地域では。

 

高松 ロシアでも、日本から輸入した自販機を約600台展開していますが、現地での評判は良く、引き合いも強い。今後は、これらの海外事業を、いかにスピード感を持って拡大していけるかが勝負です。いずれは、海外飲料事業の比率を国内と同規模に引き上げていきたいです。

 

── 医薬品事業の状況は。

 

高松 大同薬品工業は、ドリンク剤の受託製造市場で6割のシェアを占める収益性の高い事業です。足元では、主に中国を中心としたアジア市場での美容ドリンクの受注が好調です。ドリンク剤市場は全体的に縮小傾向にありますが、今後もアジア市場での需要は底堅いことや、受注元の製薬メーカーは、基本的に製造部門を外部に委託する傾向が高いことから、現在稼働している奈良工場に加えて、新たに群馬県に新工場を建設することを決定しました。

 

 ◇IoT自販機を本格展開

 

── 昨年、キリンビバレッジと自販機事業で提携しました。狙いは。

 

高松 両社の主力商品をお互いの自販機網で相互販売し、販路を広げることでお客様との接点を増やし、自販機の収益向上や商品のブランド力を強化する狙いがあります。当社からは、「世界一のバリスタ」シリーズの2品を採用いただきました。

 また、自販機の設置に関しては、当社は地方に強いのですが、キリンさんは都市部が強い。その点を補う意味でも、キリンさんとは良い補完関係を構築できたと思います。

 

── 競争が激しい飲料業界で、今後どんな戦略がありますか。

 

高松 現在、国内に設置している約28万台の全国的な自販機網は、当社の最大の強みです。これを活用し、人々の生活インフラとなれるIoT(モノとモノのインターネット)自販機の展開を計画しています。

 

── 具体的には。

 

高松 例えば、自販機に通信機器を搭載し、個人のスマートフォン(スマホ)とつながることで、付近のお店の情報を受け取ったり、高齢者の見守りサービスなど自治体のお手伝いをすることもできます。既に、商品を購入した方のスマホにポイントを付与するサービスも開始しており、こうしたサービスが広がれば、自販機の価値向上につながり、当社独自の事業展開ができるはずです。現在は2万台程度ですが、将来的には15万台のIoT自販機を本格展開する予定です。

 

── 14年度に開始した5カ年の中期経営計画は今年で4年目です。進展は。

 

高松 中計では、四つのチャレンジを掲げました。(1)既存事業の成長(2)商品力強化(3)海外展開による市場拡大(4)新たな事業基盤の確立です。18年度までに売上高2000億円を目標としていますが、17年度の通期売上高の見通しは1755億円。目標達成には、M&Aによる新たな収益の柱の確立が不可欠です。

 イメージとしては、医薬品事業において、製品の製造に強みを持つ企業や、予防医薬の市場が拡大しているので、サプリメントなどの医薬品と食品の間の領域でも検討しています。

(構成=荒木宏香・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 30代前半は、自販機の開拓営業で現場を学び、30代後半で副社長に就任し、経営を見るようになりました。大阪と東京を週に2~3回往復する生活でしたが、仕事は楽しく、30代を通して良い経験ができました。

 

Q 「私を変えた本」は

A ビジネス書の『ビジョナリーカンパニー 2 飛躍の法則』(ジム・コリンズ著)です。折に触れて読み返す、指針のような本です。

 

Q 休日の過ごし方

A 2~3年前からランニングを始めました。週2回、1日10キロほど走ります。

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 ■人物略歴

 ◇たかまつ・とみや

 1976年奈良県生まれ。大阪星光学院高校、京都大学経済学部卒業。2001年、三洋電機入社。04年ダイドードリンコ入社。08年取締役、12年副社長を経て、14年から現職。

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事業内容:清涼飲料等の製造・販売

本社所在地:大阪市北区

設立:1975年1月

資本金:19億2400万円

従業員数:3602人(2017年1月時点、連結)

業績(16年度連結)

 売上高:1714億円

 営業利益:38億円

 

特集:認知症に克つ 2017年7月4日号

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◇2025年高齢者5人に1人 

◇「人類最大級の病」に

 

 超高齢化時代を目前に、日本は認知症という重大な問題に直面しようとしている。認知症の国内患者数は462万人(2012年、推計値)で、25年には約700万人に増加すると予想されている。この時、65歳以上の高齢者に占める割合は現在の7人に1人から、5人に1人へと上昇する。

 認知症は、社会的、経済的に深刻な影響をもたらす点が、他の病気と大きく異なる。特効薬のない認知症は、在宅または施設での継続的な介護が必要になるためだ。

 国際アルツハイマー病協会によると、世界の認知症患者数は15年の4680万人。認知症の治療や介護にかかるコストは、15年の8180億ドル(約91兆円)から、18年には1兆ドル(約111兆円)を超えるとの推計もある。認知症は「人類社会を滅ぼす病」と言える。

 

 しかし、認知症の仕組みはいまだ未解明で、病気の原因となる物質も特定されていない。現在発売されている治療薬は、進行を半年から1年遅らせる程度だ。予防法も確立されていない。より効果的で安全な薬の登場が望まれる中、世界の製薬会社は、根本的な治療を目指す薬の開発にしのぎを削っている。

 

 ◇6割はアルツハイマー病

 

 認知症は、学習や記憶、感情などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたした状態を指す。現在、製薬会社の多くが治療薬開発に取り組むのは、認知症の6割前後を占めるアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)だ。

 

 アルツハイマー病には大きく三つの特徴がある。大脳に現れる「脳のシミ」と言われる「老人斑」、異常たんぱく質「タウたんぱく」の凝集、神経細胞の死滅による大脳の萎縮──だ。それぞれの関係性は解明されていないが、最も早い段階で起きると考えられているのが、老人斑のもとになる異常たんぱく質「アミロイドβ(ベータ)の蓄積だ。

 

 アミロイドβは、体のあらゆる細胞にあるたんぱく質「APP」が分解される時、酵素によって切り出された部分だ。切り出されたアミロイドβは、発症の約20年前から神経細胞内にたまり始める。最初は単独で存在しているが、次第に集まり、塊を形成する。塊になる過程で毒性を持ち、神経細胞を侵すという見方もある。このアミロイドβの塊は、やがて老人斑になり、発症へと至る。

 老人斑と神経細胞の死滅との関係は解明されていない。だが、アルツハイマー病の原因と見られるアミロイドβを減らすことができれば、より根本的な治療に近づくと考えられている。そこで各製薬会社は1990年代後半から、この「アミロイド仮説」に基づいて治療薬の開発に取り組んできた。

 

 昨年9月、米製薬会社バイオジェンが開発中の薬の臨床試験で、アミロイドβを減らし、認知機能低下を抑制する効果があったとする論文を発表して注目を集めた。

 

 同社が開発する薬は、アミロイドβに結合する抗体医薬「アデュカヌマブ」だ。抗体が旗振り役になって、脳の神経細胞の働きを調節する「グリア細胞」を呼び、グリア細胞がアミロイドβを減らすと考えられている。

 

 ◇「日本は最優先市場」

 

 アミロイドβがたんぱく質(APP)から切り離され、老人斑を形成するどの過程に働きかければ効果的なのか、現状では明らかではない。このため各社は、複数の薬を同時に開発して、様子を見ている。アデュカヌマブは、最終段階に近い老人斑とその手前に作用するという。

 

 バイオジェンは昨年の臨床試験の結果により、アルツハイマー治療薬開発で世界をリードする1社になった。そのバイオジェンが今、注目しているのが日本市場だ。米国本社開発部隊が頻繁に日本を訪れ、厚生労働省や、医薬品の審査などを行う医薬品医療機器総合機構(PMDA)の幹部を訪問し、認知症市場の調査を進めている。

 

 今年1月、バイオジェンの最高経営責任者(CEO)に就任したミシェル・ヴォナッソス氏も、最初の訪問先に日本を選んだ。

 

「日本は最優先市場の一つ」。東京で開いた記者会見の冒頭、ヴォナッソスCEOはこう強調して、「アルツハイマー病治療薬の開発で最も進んでいるのは当社の『アデュカヌマブ』だ」と自信を見せた。アデュカヌマブは臨床試験の最終段階に当たる第3相試験を実施中で、20年秋に臨床試験を終了予定。20年代前半の発売を目指している。

 

 世界で最も高齢化が進む日本は、認知症の問題に先陣を切って直面することになる。日本法人のバイオジェン・ジャパンの鳥居慎一社長も、「日本で成功すれば、5年、10年後に欧米での成功につながる。日本がアルツハイマー病治療薬の開発、販売戦略のある意味で実験場になる」と、同社が強く日本にコミットしていることを隠さない。

 

 製薬大手が取り組むアルツハイマー治療薬の中で、臨床試験が進んでいるのは、アデュカヌマブと同様に抗体でアミロイドβを減らすタイプの薬だ。

 

 米イーライリリーの「ソラネズマブ」もその一つ。同社は昨年までの臨床試験の対象者よりも、症状が軽い段階の患者に対象を設定しなおして第3相臨床試験を準備している。日本イーライリリー研究開発本部の中村智実氏は、「アルツハイマー治療薬の研究は5合目くらいの位置までは来ている」と研究は前進していると話す。

 

 中外製薬も、親会社のスイス・ロシュとともに、アミロイドβを減らす抗体薬「ガンテネルマブ」の第3相試験の年内開始を目指して準備中だ。同社の開発中の薬の中には、同じくアミロイドβの撃退を狙った抗体薬「クレネズマブ」もある。

 

 アミロイドβを減らす抗体薬は、投与する薬の量や対象とする患者の症状の段階を変えながら効果を試す段階に来ている。中外製薬のプライマリーライフサイクルマネジメント部領域戦略第3グループの中谷紀章副部長は「アミロイドβという狙いどころが正しいかどうか、各社が現在実施している臨床試験の結果で判断できるところまで来ている」と話す。

 

 ◇エーザイも参戦

 

 薬の開発が難しいのは、認知症の発症メカニズムの全容が明らかになっていないためだ。診断の難しさも、開発を困難にしている。血圧や血中コレステロールなど数値で測れるものとは異なり、ヒトの認知機能(学習、記憶、感情など)の評価を数値化することは難しいという。

 

 薬理学を専門とする昭和大学薬学部の野部浩司教授は、「(認知症の薬は)原因のはっきりしない病気を、効果の確認されていない新薬を用いて、治療効果を評価するようなものだ」と説明する。薬で狙うターゲットが手探りであるがゆえに、さまざまなアプローチが試行錯誤されている。

 

 抗体でアミロイドβを減らす以外のアプローチも研究が進んでいる。「アリセプト」で認知症市場を切り開いた日本の製薬大手エーザイは、βセクレターゼ(BACE)阻害薬「エレンベセスタット」の開発に取り組む。BACE阻害薬は、アミロイドβが生まれる源流の部分に着目した薬だ。アミロイドβをたんぱく質から切り出すハサミの役割をする酵素の働きを阻害する。

 

 エーザイ・ニューロロジービジネスグループの木村禎治執行役は、「プラセボ(偽薬)に差をつけて承認に持ち込みたい」と意気込む。現在、世界で2660人を対象に第3相臨床試験を実施中だ。

 

 アミロイドβ以外にも、タウたんぱく質など治療薬の対象は広がりを見せている。富士フイルムグループの富山化学工業(東京都新宿区)は、神経細胞死そのものを抑制する治療薬の開発に取り組む。富士経済によると、国内認知症治療薬の市場規模は1497億円(16年、見込み)で、24年の予測は2045億円。この時期までに画期的な新薬が登場すれば、市場規模は一気に拡大する可能性がある。

(花谷美枝・編集部、村上和巳・ジャーナリスト)

 

週刊エコノミスト 2017年7月4日号

特別定価:670円

発売日:2017年6月26日


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オリンパス粉飾事件「指南役」 逮捕起訴の証拠に疑義が浮上

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真相解明にはほど遠い(巨額損失隠しの再発防止策を公表するオリンパス経営陣、2011年12月)
真相解明にはほど遠い(巨額損失隠しの再発防止策を公表するオリンパス経営陣、2011年12月)

 

オリンパス粉飾決算事件で新事実が判明した。LGT銀行との接点に疑問が出ている。

 簿外ファンドへの融資に使われたLGTリヒテンシュタイン銀行を最初にオリンパスに紹介したのは、粉飾決算の「指南役」として逮捕、有罪判決を受け、最高裁に上告中の元野村証券社員の横尾宣政氏(63)ではなかった――。本誌が独自に入手したオリンパスの内部資料から、従来の捜査結果を覆しかねない新事実が浮かび上がる。

 

 オリンパス事件は2011年10月、同社の巨額の使途不明金を追及していた英国人社長マイケル・ウッドフォード氏が解任されたことを発端とする。事態究明を求める株主などの声を受け、同年11月1日にオリンパス第三者委員会が発足、11月8日に同社が損失隠しを公表した。

 

 この事件では、横尾氏らの紹介によりオリンパスは損失隠しが可能になったとして、同氏らは有価証券報告書虚偽記載をほう助した罪に問われている。新事実の判明で、検察はオリンパスとLGT銀行の関係について、精査する必要に迫られそうだ。

 

将来の融資を念頭に

 

 内部資料は、「2011年11月11日森氏ヒアリング反訳」とタイトルが付けてあり、右肩には英語で「PRIVILEGED&CONFIDENTIAL(秘匿特権・厳秘)」と書かれている。

 

 ヒアリングの日付は、損失隠し公表の3日後(11月11日)で、オリンパスの顧問弁護士である森・濱田松本法律事務所とその後任となるビンガム・マカッチェン・ムラセ外国法事務弁護士事務所が合同で、オリンパスの森久志・副社長(粉飾決算で逮捕、有罪判決)にインタビューする形式となっている。資料は50㌻弱にも及ぶ。

 

 内部資料によると、森氏はLGT銀行との関係について、「最初に会った時は、下山(敏郎・オリンパス会長)とリヒテンシュタインに行っている」と証言。その時期について、「1998年とか、恐らくオリンパスのデジカメが出てすぐの頃」と答えている。同社は96年10月に最初のデジタルカメラを発売している。

 

 リヒテンシュタインで面会した相手は、「最初に下山と行った時に(リヒテンシュタインの)プリンス(皇太子)と会って、ずっとそのプリンスとお付き合いがある」と話し、LGT銀行のオーナーであるフィリップ皇太子と面識があると説明。面会の目的については、「いきなりそんな話(簿外ファンドへの融資)をしたわけではなく、向こうが持っている美術品のデジタル映像化をやろうと」と提案したうえで、「リヒテンシュタイン(皇太子)と関係があったほうがいいとしていた前提は、将来的に必要になってくるだろう」と解説。つまり、将来的な簿外ファンドへの融資依頼が念頭にあったとの認識を示している。

 

「皇太子は簿外損失認識」

 

 LGT銀行が、オリンパスの簿外損失を11年11月8日の公表以前に知っていた可能性については、「プリンスが知っていた可能性がある」と語り、「リヒテンシュタインでは、これ(粉飾決算)が(オリンパスによって)オープンになり、LGT銀行という名前が出て、すごく問題になっている」と述べている。

 

 ヒアリング当時、オリンパスは上場を維持するために、決算を過年度にわたって修正する必要に迫られていた。だが、オリンパスは損失隠しに関する資料をすべて破棄しており、決算を修正するにはLGT銀行からの資料提供が不可欠だった。森氏の発言はリヒテンシュタイン王室を刺激した場合に、協力が得られないことへの懸念を示したと見られる。

 

 横尾氏を巡る刑事裁判では、検察は「97年末ないし98年初めごろ、東京・六本木の飲食店で、横尾氏がLGT銀行東京駐在所長をオリンパス幹部に紹介した」と主張し、これが1審、2審でも横尾氏が粉飾を手助けした有力な証拠として認定された。

 

 オリンパス広報部はこの内部資料の存在に関して、「コメントは控えたい」としている。

 

 横尾氏は本誌の取材に対し、「私が六本木の飲食店でLGT銀行東京駐在所長の臼井康広氏とオリンパス財務担当者の山田秀雄氏、森久志氏、中塚誠氏らと会ったのは98年3月7日だ。だが、入国記録によると、98年2月18日にLGT銀行の取締役が来日。3月7日以前に、オリンパス幹部とLGT銀行幹部は面会している」と説明。すなわち、「オリンパスとLGT銀行は私が紹介する前からビジネス上のパートナーであり、損失隠しを助けるために私が紹介したとする検察の主張は誤り」と強調している。

 

  横尾氏はLGT銀行幹部の入国記録などを元に、裁判所に事実関係の再調査を求めたが認められず、2審の東京高等裁判所では控訴を棄却されている。

 

 LGT銀行は06年、同行社員が顧客名簿をドイツの連邦情報局(BND)に売却したことで、ドイツの富裕層がLGT銀行に隠し持っていた秘密口座の存在が明るみとなった。口座の保有者の中には、ドイツポストのトップも含まれ、一大金融スキャンダルに発展した。(編集部)

【以下、内部資料から抜粋】

 

<内部資料P9~10>

 

MHM(森・濱田松本法律事務所) 99年当時だったら、その当時は何か違法なことをしているって認識があったことは?

 

森 ない。

 

MHM むしろ、御化粧の範囲内で

 

森 そうです。

 

MHM 本当は…だけれども開示はしていないなという…

 

森 そうです、そうです。それ以前はですね。だた、LGTは何とかっていうのは確実に御化粧をするためにやっているものですから、それはそういうことですね。

 

MHM 山田(秀雄氏。のちの副社長、常勤監査役)さんが部長ということで、その時の財務役員が

 

森 だから、その時は菊川だったんですね。

 

MHM ほう

 

森 岸本が社長で。

 

MHM 岸本(正寿・社長)さんは何か、岸本さんじゃないか。下山(敏郎・会長)さんがそんなことは俺はしらないという記事が日経に出ていたんですが、森さんからみてそれはどう思われますか。

森 山田も同様ですけれども、やるせない気持ちではありましたけれども。変なことを言うと、LGTバンクと一番最初付き合いをした時は、下山とリヒテンシュタインに行ってるんですよ。

 

MHM ああ、そうですか(笑)。

 

森 下山とリヒテンシュタインに行ってます。それは、下山が現役じゃない、会長くらいの時です。その頃は、だから、リヒテンシュタインっていう所とどんなふうに出来るのかっていうのが良く分かっていなかったんですけれでも、そうは言っても、知っていると得ですよ、みたいな紹介をしてもらった。それで偶然向こうに行ってお話をして、向こうのリヒテンシュタインのパドゥーツって所のお城に入れてもらって、いろんな美術品を見たりしました。それで、ちょっと何年頃なのか、ちょっと調べればいいと思うんですが、当時はリヒテンシュタインとは、そうは言ってもいきなりそんな話をしたわけではなくて、下山と行った頃は、向こうが持っている美術品のデジタル化、デジタル映像化っていうのをやろうという。だから、オリンパスは、まさにそうですね。98年とかですね、恐らく、オリンパスのデジカメが出てすぐの頃です。まだ画像はあまりその頃のデジカメは綺麗じゃなかったんですが、オリンパスのこの技術を使えばこんなに綺麗なんだっていうことを証明してやるために、プライベートなそういう秘蔵品という美術品をデジタル化画像で表に出しませんかという話を持っていったんです。だから、それをリヒテンシュタインと繋がったのがいいだろうなって言っていた前提としては、そこをそういう、要するに段々こうやって必要になってくるだろうって話をしていたんですね。ミツシマとも一緒に、リヒテンシュタインとその後行ったことがありますし、菊川とも一緒に行ったことがあります。

 

<内部資料P38~40>

 

MHM パリバ(証券)が指南したっていう報道になっている。

 

MHM 週刊朝日のアレがそういう記事になっていたんですね。

 

MHM 他の記事も読んだらそう書いてあった。

 

森 誰かが最初そういう話をし始めたんじゃないですかね。さっき横尾さんと電話をしました。「すごい久しぶりですね」って言いました。毎日新聞か何かに、全て横尾さんがやったとかって書いてあるんですか?「とんでもない」と。「俺が全部知っているわけじゃない」とかって大騒ぎされちゃいましたけど。

 

MHM 今、ジャルックス(JALUX)の横尾(昭信氏、兄)さんですか?

 

森 違います。横尾弟。だからLGTのほうは彼は知ってるわけですけども、ジャイラスのことなんか全然知らないと思います。全部やったかのように書かれたらとんでもない。

 

MHM 「全部」はひどい。

 

森 ええ。だから全部知ってる人はいない。どっちにしても話はそういうことで。でもどこかで出なくちゃいけない話になったわけなんですけど。個人的には、こうやっていろんな話が出来るようになってすごく気が楽になった。もう何でも知っていること、何でも話が出来ちゃうって、こんなに気持ちがいいことだとは思っていなかった。変な話ですけど。

 

MHM あとはお金の流れだよね。それは第三者委員会にもらうしかないのかね。

 

MHM 今お金の流れを究明されているのは、結局森さんご自身がそれをリヒテンシュタインなりに連絡しているということですか。

 

森 私がやるしかないですから、私またこれで戻って、リヒテンシュタインと電話をすることにしてるんですけど。

 

MHM 第三者委員会にも出していただくけど、会社として分かった時点で我々にも…

 

MHM 森さんが調べるという人が、財務の人と共同でやってるんじゃなくて、森さんお一人でやっているんですか? 財務の部長とかが…

 

森 リヒテンシュタインの担当者と面識があるのは私しかない。あとは菊川。今いるだけですね。山田もあったことないです。

 

MHM 現役の財務部の、現場の人たちはよく分からないという感じなんですか?

 

森 そうです。リヒテンシュタインについて言うと、すごく悩ましくて、リヒテンシュタインの中ではこれがオープンになったことによってLGTっていうのが出てきてということになって、すごく問題になっている。

 

MHM そうですか。

 

森 だからちょっと話をしてみて、どういう反応なのかというのをちょっとわからない。言っているのは、リヒテンシュタインのプリンスが知ってる可能性があるよね。一番最初に下山と行った時に向こうのプリンスと会っていて、ずっとそのプリンスとお付き合いがある。今年になってもそのプリンスが日本へ見えた時に、私は菊川と一緒に会っている。だからもしそういうところに何か影響が出るとしたら、彼らは何も対応してくれない可能性がある。そうすると困っちゃうんです。それですごく心配している。単に事務的に「昔のレポート出してよ」って言って、レポート出してきてくれれば、それは本当はいいんですけど、そこがよく分からない。

いわゆるリヒテンシュタインのプリンスファミリーですけど。王様じゃなくてプリンスです。だから彼らが臍を曲げていたら何も手配してくれないかもしれない。それが困っちゃいますけど。

(終わり)

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技術者を正社員雇用して派遣し急成長 若山陽一 UTグループ社長

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Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── どんな事業をしているのですか。

 

若山 当社が正社員として雇用した技術社員を半導体を中心に、電機、自動車、建設などの工場や現場に派遣する事業です。常時1万6000人を派遣しており、7割が正社員です。残り3割は、勤務場所などの関係でその地位を選んだ非正規社員です。派遣先の中核は半導体産業です。

 

── 正社員派遣とは珍しいビジネスモデルですね。

 

若山 派遣に対する世間一般のイメージは「不安定」「有期雇用」などでしょう。当社は違いますが、大多数は、派遣期間は3カ月で、契約更新時に次の契約の給料を決めるというモデルです。一般には派遣社員の給料は、派遣先と派遣会社の間の契約に合わせて決まる。職歴の連続性など加味されていません。これでは、派遣社員は常に3カ月先のことなど考えられない状態です。派遣という働き方が増えていく中で、派遣される技術社員に安心・つながり・成長を提供する会社でありたいと考えました。安心の一つの形として正社員として雇用しています。

 

── 正社員派遣によって、派遣社員にはどのようなメリットがあるのですか。

 

若山 給料が、派遣先と派遣会社の契約に左右されるのではなく、当社の賃金体系によって社員が持っている技術を評価して給与を決めることです。当社の理念は「派遣社員がお客様」です。技術社員に当社を活用してキャリアを形成してもらい、可能性を広げるのに資することに存在意義があると思っています。

 

 ◇半導体への派遣が中核

 

── なぜ半導体への派遣を中核としているのですか。

 

若山 1995年に創業して以来売り上げが伸びていましたが、2001年にITバブル崩壊の影響もあり、初めて減収となりました。競合の大きな派遣会社と同じことをしていては、生き残れないと感じました。当時『ビジョナリーカンパニー2』(ジム・コリンズ)を読み、この会社の使命をきちんと決めようと決意しました。未来永劫(えいごう)社員が納得して働ける会社を作ろうと、当時の社員36人と1年間議論したのです。その議論の中で「チーム派遣の需要があり、高い技術力が求められる分野が、当社の事業戦略にかなう」という結論になりました。その分野にあてはまる事業が半導体だったのです。

 

── どのように半導体派遣事業を立ち上げたのですか。

 

若山 当時は米国系半導体メーカーのリストラがあり、30人を採用しました。彼らに半導体に必要な営業資料や教育資料を作成してもらい、会社の仕組みを変えました。それが今日の当社の中核となっています。

 

── その経験が現在に生かされているのですね。

 

若山 あの危機は、ビジネスや会社の根幹を考えるいい機会になりました。自分たちの価値観を発見したことで、一気に会社が動き出しました。その2年後にはJASDAQに上場し、現在は東証1部上場を目指しています。大きな変化は、絶対的なビジネスチャンスと言えます。

 

── いつごろから正社員派遣モデルを描いていたのですか。

 

若山 大学時代からインターンで派遣会社に勤め、24歳で起業し機械設計の技術者派遣を始めました。ただ、当時から正社員派遣を思い描いていたのではありません。さまざまな派遣社員とかかわる中、派遣社員の生活基盤を良くする会社でありたいという思いが積み上がった結果です。

 

── 正社員派遣は人件費がかかるのでは。

 

若山 当社は働きがいを通じて離職率の低さを実現しています。また、1人ではなく、平均で30人単位、多いと500人、1000人規模のチームで社員を派遣する「チーム派遣」の形を取っており、生産性は高いです。これらの付加価値を提供しているコストを、お客様が必要とされているので、経営の圧迫要因にはなりません。

 

── チーム派遣とは珍しいですね。

 

若山 プロフェッショナルが1人で派遣されて「絶対にこの仕事を遂行する」という欧米型モデルの派遣は日本人に合っていません。また、もの作りはチームで仕事をするものです。チームの力で学び教え合い、生産性を向上してきたのが日本なのです。また、1人で派遣されると、現場で誰が上司なのか同僚なのか分からない中、不安定な気持ちで働くことになるからです。体系だったチームで派遣することで、このような問題に対処できます。派遣先のお客様にも、労務管理が効率よくなるというメリットがあります。

 

── 国内で人手不足が深刻化しています。派遣社員確保に影響は。

 

若山 当社では月間300人の純増を達成しています。ポイントは、派遣先のお客様が良い条件を示してくれる仕事を確保することです。その条件とは、契約期間が長くて、派遣社員の受け入れ数が多く、派遣単価が高いという三つです。当社の希望条件を理解してくれて、職場環境も整備されている派遣先というと、自然に大企業になるのです。当社の顧客に日本を代表する企業が多いのもこのような理由からです。

 

── 具体的な派遣先は。

 

若山 日立製作所グループやトヨタ自動車、東京エレクトロンなどです。売り上げベースで、半分が半導体・電子部品、25%が電池・環境エネルギー、自動車関連が16%です。

(構成=種市房子・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 32歳で上場しました。24歳での起業以来、社員・顧客と直接顔を合わせる人と仕事をしてきましたが、直接顔を合わせない株主の方々に対して客観性と一貫性をもって会社の説明をできるように意識が変わりました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 絵本の『スイミー』(レオ・レオニ)です。チーム派遣にも通ずるものがあり、2000~3000冊買っていろいろな人に配りました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 昨年生まれた息子を風呂に入れたり、一緒に遊んでいます。

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 ■人物略歴

 ◇わかやま・よういち

 1971年生まれ、愛媛県出身。日本大学を中退後、人材派遣会社に勤務。1995年に前身のエイムシーアイシーを設立。2007年、ユナイテッド・テクノロジー・ホールディングスとしてグループ持ち株会社設立。15年に現在の社名に変更。46歳。

………………………………………………………………………………………………………

事業内容:製造、設計開発、建設分野などの正社員派遣事業

本社所在地:東京都品川区

設立:2007年

資本金:5億円

従業員数:1万6118人(17年3月現在)

業績(17年3月期)

 売上高:575億8800万円

 営業利益:34億1300万円

特集:ビジネスが変わる民法改正 2017年7月11日

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◇契約のルールに大きな変化

◇グローバル時代に法体系刷新

 

「ユーザーがユーザー登録や登録内容の変更をしたことや弊社がユーザー登録を承認しないことにより生じた損害に関しまして、弊社は一切責任を負わないものとします」──。

 

 誰もが気軽に利用できるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などインターネット上のサービス。利用を始めようとすると、「約款」や「利用規約」といった名称の細かな文字が並ぶ画面が現れ、細かく読まずに「同意する」ボタンを押した経験は誰にでもある。

 

 こうした約款はネット関連に限らず、保険や電気、ガス、鉄道、旅行など、さまざまなサービスにつきまとう。しかし、利用者が細かく読んでいない約款は、当事者の意思が合致することを前提とする契約としてどこまで有効なのかという疑問が生じる。

 

 実は民法に約款についての定めはこれまでなく、古くからトラブルのタネになってきた。すでに1915(大正4)年には、大審院(当時の最高裁)が火災保険の約款の効力について、約款の内容を深く知らなかった時でも約款の内容によって契約する意思があったと推定するとした判決を下した。この判決は現在まで生きる重要な判例となっている。一方、自動車保険の重要な免責事項については、東京地裁が82年、契約締結前に契約の相手方に実質的かつ直接的な告知が必要と認定した。

 

 こうした判例の積み重ねによって、約款として盛り込まれた重要な契約条項の内容を当事者が具体的に知らなかった場合、当事者を拘束しないことがあるという考え方が現在は定着している。さらに、サービスの利用者にとって一方的に不利な条項が盛り込まれることなどを防ごうと、電気事業法や旅行業法などの「業法」で約款を規定してきたほか、消費者対事業者の取引で民法に優先して適用される特別法「消費者契約法」も、約款上の不利な条項を規制している。

 

 しかし、事業者対事業者など、業法や特別法の対象とならない取引でも約款は日常的に用いられており、トラブルのタネがなくなることはない。とはいえ、約款という形態がなければ、不特定多数を相手にするサービスで一々、個別交渉しなければならず、あまりに非効率だ。民法が施行された1898(明治31)年当時の経済や取引は、約款という形態の契約を想定していなかったのだ。

 

 ◇メインは「債権法」

 

 民法は五つのパートから構成されている。時効など各編の共通ルールを定めた第1編「総則」、物を支配する権利を定めた第2編「物権」(「物権法」とも呼ばれる)、契約などのルールを定めた第3編「債権」(債権法)のほか、夫婦や親子関係などについて定めた第4編「親族」(親族法)、人の死亡に伴う権利・義務関係の移転のルールを示した第5編「相続」(相続法)で、5月26日に国会で可決・成立した今回の民法改正は債権法がメイン。実に約120年ぶりとなる。

 

 親族法と相続法は1947年、日本国憲法制定に伴い「家制度」を廃止するために全面改正されたほか、物権法も2003年、担保の分野を中心に改正されるなどしている。債権法が長く改正されなかったのは、(1)日本の民法自体がシンプルで、解釈や判例によってそのすき間を埋めてきたこと、(2)債権法にいつの時代にも通用する普遍性があったこと──という大きく二つの理由がありそうだ。また、債権法の分野では特別法として借地借家法なども制定され、民法を補う役割を果たしてきた。

 

 しかし、インターネットをはじめとする電子取引が21世紀の現在は拡大するなど、社会や経済を取り巻く環境は劇的に変化した。また、国際商取引の国際標準が、日本の民法がモデルとした独仏の大陸法から英米法となったのも大きな変化の一つだ。また、約款のように民法に規定がなく、空いた網目の穴を判例や解釈論で塞ぐという従来の運用は、民間の取引実務に大きな支障がなくても、法体系としての安定性に欠ける。さらに、国民ばかりでなく、日本と取引する海外企業にとっても分かりにくい。

 

 今回の民法改正はそうした時代の圧力を反映させた。施行日は2020年の1月1日か4月1日となる可能性が濃厚だ。改正の要点は、(1)現代の社会や経済などの状況に合わせる、(2)判例や解釈論が定着したものを明文化──したこと。(1)は約款の効力などを規定する「定型約款」の新設や、業種でバラバラだった売掛金などの「消滅時効」の廃止といった点で、(2)は賃貸物件での敷金や退去時の原状回復義務のルールに関する項目の新設などだ。

 

 ◇とことんまで議論

 

 だが、改正作業は長期間を要した。

 

 法務省が検討に着手したのは2006年の初め。これを受けて、同年10月には法学者有志の「民法(債権法)検討委員会」が債権法改正の方針づくりを始めるなど、法改正に向けた議論が広がっていく。そして、千葉景子法相(当時)が09年10月、法制審議会(法相の諮問機関)に債権法見直しを諮問し、公式の議論がスタート。具体的な議論の場として法制審に「民法(債権関係)部会」を設置し、15年2月に法案策定の基となる「要綱案」をまとめるまで部会開催は99回を数えた。

 

 部会では法曹界や有識者のほか、産業界、労働団体などの代表が意見をぶつけ合った。最後まで議論がもつれたのは、民法に「定型約款」をどう盛り込むかだ。民法上の規定となれば事業者間取引にも幅広く影響が及ぶことに産業界は難色を示した。個人より知識や対応力のある事業者間にも適用されると、取引の円滑化が損なわれたり、事務処理が膨大になることが懸念されたからだ。ぎりぎりまで条文案の修正作業が続いた。

 

 結局、最後となる99回目の法制審部会で、産業界の代表である東京ガス出身の委員が「特に今日も縷々(るる)まだ反対を述べるとか、そういうことをするつもりは全くございません」と発言し、改正の方向性で決着。民法(債権法)改正検討委員会の委員から、法制審の民法(債権関係)部会幹事まで10年以上、債権法改正の議論にかかわった早稲田大学の山野目章夫教授は「明治の人たちに民法をダメにしたと怒られないような改正にしなくてはという責任感があった」と振り返った。

 

 改正民法施行に備え、企業は対応を取り始めた。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は、これまでに作成した約款の見直しに着手する。傘下の三井住友銀行などグループ企業は、預金取引だけでなくインターネットバンキングなどでも数多く約款を定めており、「これまでの約款に不適切な条項があったとは考えていないが、改めて、適法性があるかどうかを約款ごとに確認する必要がある」という。

 

 ◇損害保険金に影響

 

 今回の民法改正では、法定利率を「3%」に引き下げるとともに、3年ごとに見直す「変動制」も導入した。現行の法定利率は「5%」と、預金がほぼゼロ金利の現在はかなりの高金利にあたる。5%は民法制定当時の金利などが基とされる。その後、バブル経済に至るまで日本はインフレが常であり、バブル期の預金金利は5%を上回っていた。法定利率は「最低限の金利」の位置づけだった。

 

 だが、バブル崩壊後の日本経済は低成長が続き、市中金利は法定利率を下回って超低空飛行を続ける。さらに、金融政策も追い打ちをかけ、日銀は13年4月、成長率を底上げするためとして異次元緩和を導入。16年2月には、ついにマイナス金利政策へと突入し、法定利率と現実との乖離(かいり)は当面、埋まりそうにない。法定利率の見直しもまた、民法を現実に合わせていく時代の要請だったといえる。

 

 法定利率が見直されたことで、大きく影響しそうなのが損害保険会社の支払う対人賠償保険金の算定だ。交通事故などで被害者が死亡したり後遺障害が残ったりすると、その人が働き続ければ得られた収入に応じて算定される「逸失利益」を賠償する。この逸失利益を一括で賠償する際、働き続ければ収入を得られた時点までの利息分を差し引く(中間利息控除)が、利息分算出に使われるのが法定利率だ。

 

 これまでは5%の複利計算で差し引かれていたが、今後は3%で差し引かれるため、現在に受け取る保険金の額は多くなる。例えば、10年後に受け取るはずの1000万円の逸失利益があったとして、5%の複利計算では現在の価値は613万円余りだが、3%では744万円強と100万円以上の違いが出る。わずか2%の差でもこれほど多額になるため、損保大手の担当者は「保険料が引き上がる可能性もある」と話す。

 

 ◇家賃保証会社は「追い風」

 

 一方で“追い風”となるのが家賃保証の業界だ。これまで個人が賃貸マンションなどに入居する場合、賃料不払いなどに備えて家賃保証会社を使いながら、賃貸物件のオーナーが借り主から連帯保証人を取ることが多かった。しかし、民法改正後は個人が過大な保証債務を抱えるのを防ぐため、「公正証書」(公証人が作成する書面)で保証人の意思を確認したりする必要があり、保証人のなり手のハードルが高くなる。

 

 そもそも、高齢の入居者など連帯保証人をつけにくい人が増え、連帯保証人が保証していた分まで家賃保証会社が担うなど役割は広がっており、家賃保証会社の保証件数は伸び続けている。家賃保証会社のジェイリース(東京都新宿区)の中島拓社長は「民法改正によってさらに家賃保証会社の役割は拡大する」と意気込み、社員向けに今年4月、弁護士による民法改正の勉強会を開くなど着々と備えている。

 

 商業用不動産向けの保証会社も、商機拡大のチャンスとみる。商業用不動産では家賃の不払いなどに備え、月額賃料の8~12カ月分を敷金とするのが慣例。さらに、入居するテナント企業の社長などを連帯保証人としてきたが、それも民法改正後は難しくなる。商業用不動産で敷金に代わる保証を提供する日本商業不動産保証(同港区)は民法改正を見据え、テナント側が支払う敷金を3カ月分としたうえで、残る敷金分を不動産のオーナーに保証する新サービスを6月末から始めた。

   *  *  *

 日々のビジネスや身近な生活にも深く関わる民法が大きく変わる。しっかりと理解して法改正に備えたい。

(桐山友一、米江貴史・編集部)

週刊エコノミスト 2017年7月11日号

定価:620円

発売日:7月3日月曜


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目次:2017年7月11日号

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ビジネスが変わる民法改正

20 契約のルールに大きな変化 グローバル時代に法体系刷新 ■桐山 友一/米江 貴史

24 ポイント1 短期消滅時効の廃止 飲み屋のツケ、病院の診療代…… 時効10年に統一し、煩雑さ解消 ■三平 聡史

26                 労働債権の消滅時効 民法改正に合わせ長期化 ■水口 洋介

27     2 定型約款 現実に合わせ明確に定義 相手に不利な内容は無効 ■小野 智彦

28     3 法定利率の引き下げ 5%から3%へ「変動制」に 過払い金や損害賠償を左右 ■岩田 修一

30     4 保証人の制限・保護 「公正証書」でハードル高く 事業の資金調達に影響も ■大神 深雪

32     5 瑕疵担保責任が変わる! 「契約不適合」の概念を導入 請負契約のシステム開発は注意 ■小久保 崇

34 貸す人も、借りる人も必見 不動産実務はこう変わる 解説 重要7項目 ■吉田 修平

  (1)賃貸借の期間/(2)借りる人の修繕権/(3)貸す人の「地位留保」/(4)賃料の減額/(5)瑕疵担保責任/(6)危険負担/(7)保証人の責任

37 我妻民法の大転換 「大陸法」から「英米法」へ 国際的潮流への対応 ■松尾 弘

39 相続法の改正議論 与党に「家制度」への思い? 「法律婚だけ保護」に反対噴出 ■荒木 理江

40          預貯金の「仮払い制度」検討

 

Flash!

13 東芝総会後も変わらない経営危機/タカタ民事再生法で取引先に「選別」の不安/大日本住友製薬のがん治療薬開発失敗

17 ひと&こと 迷走するソフトバンク後継者選び/東芝とSKハイニックスひそかな接近/中国の巨額買収の行方

 

Interview

4 2017年の経営者 若山 陽一 UTグループ社長

46 問答有用 清水 重友 ライト光機製作所社員

  「諏訪から世界に誇る双眼鏡を送り続けます」

 

エコノミストリポート

82 豊洲移転問題 過剰な日本の土壌汚染対策 「暴露地点」でのマネジメント重要 ■茨木 希

 

41 東京 頻発する東京圏鉄道のダイヤ遅延 JR中央線・総武線(緩行)が最悪 ■竹本 遼太

74 中東 「カタール危機」のもつれた背景 サウジとぶつかった「ガスマネー」 ■畑中 美樹

77 半導体 スマホじり貧の米クアルコム PC、サーバー向けでインテルに挑戦状 ■服部 毅

79     特許料巡りアップルと泥沼の訴訟合戦

80 成長 アジアインフラ26兆ドルの資金需要に対応できるか ■清水 聡

 

World Watch

64 ワシントンDC ロシア疑惑の傷口広げ トランプ政権自壊への道? ■今村 卓

65 中国視窓 広がるシェア自転車 海外市場も積極開拓 ■岸田 英明

66 N.Y./カリフォルニア/英国

67 韓国/インド/インドネシア

68 上海/ロシア/カタール

69 論壇・論調 独第2党の所得再配分公約 響かない「公平な社会」標榜 ■熊谷 徹

 

Viewpoint

3 闘論席 ■佐藤 優

19 グローバルマネー 次の「危機」に着々と備えるFRB

44 アディオスジャパン(59) ■真山 仁

50 学者が斬る 視点争点 地価上昇、中心街活性化では困難 ■吉弘 憲介

52 言言語語

60 名門高校の校風と人脈(247) 千葉高校(千葉県) ■猪熊 建夫

62 海外企業を買う(147) プーマ ■清水 憲人

70 東奔政走 狂い始めた安倍改憲シナリオ 「強権・強弁」長期政権にほころび ■平田 崇浩

72 福島後の未来をつくる(49) 日本の電力を救うデジタルグリッド 再生可能エネの大量導入は可能だ ■阿部 力也

94 景気観測 実質可処分所得の伸びが低下 個人消費の本格回復は18年度以降 ■斎藤 太郎

96 ネットメディアの視点 ネットが監視する権力の私物化「官邸のウソ」暴いた1枚の写真 ■山田 厚史

97 商社の深層(75) 丸紅の電力事業がIoT、AI活用 コスト削減・新ビジネス創出目指す ■池田 正史

100 アートな時間 映画 [しあわせな人生の選択]

101        美術 [ジャコメッティ展]

102 ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ経済英語 “ Narrow Framing ”

 

Market

88 向こう2週間の材料/今週のポイント

89 東京市場 ■隅谷 俊夫/NY市場 ■櫻井 雄二/週間マーケット

90 中国株/為替/金/長期金利

91 マーケット指標

92 経済データ

 

書評

54 『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

  『日本ノンフィクション史』

56 話題の本/週間ランキング

57 読書日記 ■高部 知子

58 歴史書の棚/海外出版事情 アメリカ

 

86 定期購読・デジタルサービスのご案内

 

53 次号予告/編集後記


週刊エコノミスト 2017年7月11日号

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定価:620円

発売日:7月3日月曜

ビジネスが変わる

民法改正

 

お金の貸し借りなど契約に関わる民法が改正された。約120年ぶりの抜本改正がビジネスや暮らしに与える影響は大きい。2020年にも施行される予定で、改正のポイントをしっかり押さえたい。

◇契約のルールに大きな変化

◇グローバル時代に法体系刷新

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 誰もが気軽に利用できるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などインターネット上のサービス。利用を始めようとすると、「約款」や「利用規約」といった名称の細かな文字が並ぶ画面が現れ、細かく読まずに「同意する」ボタンを押した経験は誰にでもある。続きを読む


第49回 福島後の未来:日本の電力を救うデジタルグリッド 再生可能エネの大量導入は可能だ=阿部力也

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◇あべ・りきや  1953年福島県生まれ。東京大学工学部電子工学科卒、電源開発入社。九州大学博士(工学)。米国電力研究所客員研究員、J-POWER上席研究員を経て、2008年より現職。
◇あべ・りきや  1953年福島県生まれ。東京大学工学部電子工学科卒、電源開発入社。九州大学博士(工学)。米国電力研究所客員研究員、J-POWER上席研究員を経て、2008年より現職。

阿部力也(東京大学大学院技術経営戦略学専攻特任教授)

 

 2011年3月11日に東日本大震災が発生し、未曽有の規模の大停電が起こった。火力や原子力はじめ、水力や変電所の停止を含めると、およそ3000万キロワットの電源が関東、東北地方で失われたと見ている。その結果、東京電力と東北電力管内では合計約850万世帯の停電が発生。業務用、産業用の電力も失われた。その後も輪番停電などが行われ、長期にわたり大きな混乱をきたした。

 

 現代社会において電気は、エネルギーの供給源としてだけではなく、情報通信や交通、金融など、あらゆる分野の基盤を担っている。東日本大震災の経験により、そうした電力システムの重要性が強く示唆された。そのため、現在は電源の信頼性の強化、系統の増強といった電力システムを強化するさまざまな対策が検討され始めている。

 

 しかし一方で、電力システムは今までとはまるで違う局面を迎え始めた。設備価格の低下が引き金となり、再生可能エネルギーの導入量が大幅に増加しているのだ。世界では太陽光発電の累積導入量がここ6年間、年率50%弱で拡大している。再エネは増え続けると見るしかないであろう。

 

 日本でも、太陽光発電の導入容量が3100万キロワットに達し、震災時に喪失した3000万キロワットを超えた。すなわち、日本全体が曇天になると、震災時規模の電源喪失が起こることを意味する。これは大問題である。

 

 出力が変動する再エネの大量導入には、現在検討されている送電線の増強などの対策では対処しきれず、今までと「別次元」の電力システム改革が行われなければならない。筆者は「デジタルグリッド」という新しい電力システムがその答えになると考えている。

 

 デジタルグリッドとは、一言でいえば、既存の送配電網(系統)の末端に接続された中小の系統「セル」の集合体である。このセルは系統と電力のやり取りをしながら、周波数については系統と同期しない特徴を持っている。以下ではなぜ、このデジタルグリッドが再エネの大量導入につながるのかを、震災時の状況を再確認しながら説明していこう。

 

 ◇停電を防いだ電気のバルブ

 

 震災時、関東最南西の神奈川県においてすら、多くの需要家が停電した。しかし、静岡県や長野県を含め、西日本で関東の停電の影響を受けたところはない。なぜか。

 

 関東の停電の影響は、日本列島を東西に分断する周波数変換所でせき止められたからである。

 

 周波数変換所は50ヘルツの東日本と、60ヘルツの西日本をつなぐ「電気のバルブ」のようなものだ。異なる周波数間でも意図すれば電気が流せるが、勝手には流れない。震災時にはこのバルブが関所になって影響が伝播(でんぱ)しなかった。

 

 つまり、周波数が同期しない、いわば「非同期連系装置」を、もっと小型化したものを電力系統の随所に置けば、周波数などの影響を装置がある場所でストップさせ、連鎖的な停電を防ぐことができる。

 

 筆者が開発した「デジタルグリッドルーター(DGR)」は、この非同期連系装置を小型化したものだ。

 

 前述のセルの中には、このDGRや発電機、蓄電池などが設置される。既存の送配電網にトラブルなどがあり、電力系統が停電しても、セルは周波数の影響を受けないため停電せず、セル内の発電設備と蓄電池で電気を利用し続けられる。

 

 このセルは、再エネの導入にも貢献する。セル内では、電力の周波数を調整できる機能がある。例えば、セル内に設置された太陽光発電設備の発電量が増えた場合、既存の送電網に流したりして調整する。これにより火力発電所の燃料消費量を減らすことができる。一方、天候が不順になって電力不足となれば、既存の送配電網から電力を調達する。

 

 デジタルグリッドは既存の系統とも共存するシステムなのだ。

 

 今までの系統に、こうした自立性の高いセルがいくつも接続するようになれば、送電線増強もそれほど必要なく、再エネも大量に導入することができるようになる。

 

 なお、セルの大きさはさまざまで、電力需要が50キロワットのものから、数十万の人々が住む50万キロワットのものも考えられる。セルの中に、セルがある入れ子構造も可能だ。

 

 デジタルグリッドは市場取引を通じて同時同量を達成する。それが具体的にどう機能するのか、詳しく説明していこう。

 

◇暗号化アドレスで電気識別

 

 まずDGRに、ネットワークに接続されたコンピューターなどを識別する「暗号化アドレス」を付与する。それにより、その電気が何から生まれ、どこで作られ、どのようにして運ばれてきたといった情報を識別できるようになる。

 DGRが設置されたセルの間では、この識別機能を用いて毎時0・1キロワット単位の電力量を1単位として電力を売買することができる。たとえば、AというセルがBというセルから太陽光発電設備で発電した電気を買いたい場合、制御システムからDGRにそうした売買情報が伝えられ、実際に電力が送り込まれる。

 売買の結果はスマートメーターで確認され、決済については取引を行う当事者同士が取引を記録して改ざんを防止するブロックチェーン(分散台帳)技術を用いて仮想通貨で行う。

 デジタルグリッドが実現すれば、DGRを太陽光などの発電設備を持つ消費者の自宅などに設置して、売買を支援するサービスプロバイダーなどが多数生まれるだろう。

 また、電力の取引は近隣にあるセル同士の電力取引だけでなく、遠隔地同士の電力取引や、CO2排出権などの環境価値の取引なども、すべてコンピューター上で自動的に処理される。さらに電気の先渡しや、先物取引なども生まれるだろう。

 筆者らはこれまで、鹿児島県薩摩川内市の住宅や石川県和倉温泉の電力融通、福島県いわき市サンフレックス永谷園の電力融通などを通じ、DGRの実証試験を行ってきた。

 今年度は環境省の受託事業で、さいたま市浦和美園地区で、再エネ導入を加速するDGRおよび電力融通決済システムの開発・実証に取り組む。

 プロジェクトチームは立山科学工業と東京大学が共同実施者で、日立アイイーシステム、関西電力、東京電力ホールディングス、 NTTデータ、テセラ・テクノロジー、USD、日本総研がチームに参画している。NECやみずほ証券もアドバイザーとして参画している。

 デジタルグリッドは、インターネットの電力版として根本的な社会変革を生み出す可能性があると確信している。

 震災で甚大な被害を受けた福島県は2040年までに再エネ100%を達成すると宣言している。デジタルグリッドを利用すれば、再エネが大量に導入でき、目標は前倒しで達成されるだろう。

(阿部力也・東京大学大学院技術経営戦略学専攻特任教授)

半歩先の新技術で企業を支援する 根元浩幸 クレスコ社長

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Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── サービスの柱は何ですか。

 

根元 BtoB(企業向け)のビジネス系ソフトウエアと組み込みソフトです。比率はビジネス系が8に対し、組み込みが2です。ビジネス系ソフトの半分は銀行や保険会社など金融向けが占めます。残り半分は、物流、旅行、人材、サービス、公共事業など多様な業種が顧客です。一方、組み込みソフトはスマートフォン、デジタルカメラ向けが多いです。

 

 クレスコは顧客ごとに最適なIT(情報技術)システムを構築し提供する「システムインテグレーター」だ。創業は1988年、朝日ビジネスコンサルタント(現・富士ソフト)から独立したベンチャー2社が合併して誕生。当時は汎用(はんよう)コンピューター上で動くミドルソフトウエア(制御系ソフト)やカーオーディオなどへの組み込みソフトから出発したが、IT市場拡大の波に乗り事業規模を広げた。現在はIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)など新技術も得意としている。社名はラテン語で「成長する」の意。

 

── 足元の業績は。

 

根元 ここ数年は増収増益傾向です。日本企業のIT投資は増えています。製造業も「金型よりもソフト」と意識が変わりました。「RPA(ロボットによる業務自動化)」関係のソフトの需要も増えています。

 

── 会社の強みは。

 

根元 新しい技術分野に飛び込める文化があることです。チャレンジ精神とも言えます。AI、IoT、クラウドといった新しい技術に、同業他社より1、2年先に取り組んできました。ここ数年は先端技術研究・開発活動の支援と促進を目指した「技術研究所」を社内に設置し、その成果を実際のビジネスへ導入・運用するための「先端技術事業部」を発足させました。

 

── AIの導入事例は。

 

根元 人材派遣会社フォーラムエンジニアリング向けに、IBMのAI「Watson(ワトソン)」を活用した人材マッチングシステムを構築しました。

 人材業界では雇用のミスマッチ解消が課題です。そこで、企業の求人情報と求職者のさまざまなデータをAIに学習させ、最適な組み合わせを探す仕組みを作りました。このシステムは、ワトソンの活用事例のうち、世界で十指に入る成功例としてIBMから認定されました。

 

── 新技術で先行できる理由は。

 

根元 顧客のビジネスの知識を持つことと、新技術に強い企業や研究機関との連携が重要です。例えば、当社はフォーラムエンジニアリングと10年以上の取引実績があり、同社の業務を熟知しています。それがなければAIの使い道も見いだせません。さらにIBMの営業担当も連れて行って顧客が必要とするシステムをトータルで提供しました。ビジネスの仕掛けづくりは、システムインテグレーターが活躍できる領域です。

 

 最近はオープンソース(無償)のAIを使い、目の病気を早期発見するための画像診断システムを、名古屋市立大と共同開発しました。網膜には目の病気の兆候が表れます。熟練の医師でないと診断が難しいのですが、同システムは網膜の中心を撮影した大量の画像をAIに学習させることで病気の兆候を高い確率で見つけ、眼科医の診断を補助します。今後は制度的な課題をクリアし、早期の商用化を目指します。

 

 ◇トップの顔を見せる

 

── IT分野で信頼を得るには。

 

根元 新技術と既存の古い技術、両面で確実に仕事をやり遂げることです。例えば金融系や航空系のシステムは品質問題が起きると社会的な影響が大きいので、古くても安定したシステムで動かします。これらのビジネスは地味ですが重要です。

 また、私は特別な用事がなくても顧客を訪れ、当社の考え方を自分の口から直接伝えるようにしています。トップの顔を見せると大きな仕事も安心して任せてもらえます。

 もう一つは、年間約800プロジェクトの月次業務報告書に目を通し、現場の状況把握に努めています。報告書は、問題の原因や顧客の課題を知る有用な情報ソースです。

 

── M&A(合併・買収)は。

 

根元 IT企業に限定して行っています。2016年9月にJAグループ傘下の農協観光のシステム子会社「エヌシステム」を買収しました。旅行業界向けのIT市場はパイが大きいとは言えませんが、同社を買収したことで専門性が高まりました。

 M&Aを行った後は、シナジー(相乗効果)を高めグループ全体の価値を上げる必要があります。例えば、現在10社ある子会社から、「AIで何かやりたい」といった声が上がることもあります。そこでグループ事業推進本部の下で横断的に研究・開発する仕組みを整えました。

 

── 人材確保はどうですか。

 

根元 人手不足で人材の採用は苦戦しています。そこで海外にも目を向け、数年前からベトナムの企業に仕事を出しています。これが定着してきたので4月に駐在員事務所を設置しました。うまくいけば支店や現地法人をつくることも可能です。

 

── 今後の成長に向けた施策は。

 

根元 顧客が注目している分野で、多様なサービスを出し続けることです。これは新規顧客の開拓につながります。大手企業の多くは発注するIT企業が決まっています。そこに参戦するには、他社ができないものを提供しなければなりません。そのために地道な努力を重ね、常に半歩進んだITサービスを提供したいです。

(構成=大堀達也・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ソフト開発のプロジェクトマネジャーでした。いわゆる「モーレツ社員」で、家に帰らず仮眠室に寝泊まりしたことも度々でした。現場の苦労はよく分かります。

 

Q 「私を変えた本」は

A よく読むのは司馬遼太郎です。『翔ぶが如く』や『峠』で描かれた人間模様に引かれます。

 

Q 休日の過ごし方

A 顧客とのゴルフや、ウオーキングを楽しんでいます。

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 ■人物略歴

 ◇ねもと・ひろゆき

 1960年生まれ。北海道立苫小牧東高校、北海道大学大学院卒業後、84年朝日ビジネスコンサルタント(現・富士ソフト)入社。87年メディアリサーチ入社。88年クレスコ入社、2006年取締役。常務取締役などを経て14年4月社長就任。57歳。

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事業内容:ソフトウエア開発

本社所在地:東京都港区

設立:1988年

資本金:25億1487万円(連結)

従業員数:1904人(連結)

業績(2017年3月期・連結)

 売上高:308億9300万円

 営業利益:27億700万円

第50回 福島後の未来:津波の危険を見過ごした原子力行政の変わらぬ本質=鎮目宰司

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◇しずめ・さいじ  1973年生まれ、千葉県出身。96年立教大学卒、共同通信入社。佐賀支局などを経て2004年に科学部。原子力や地震防災、福島事故をめぐる訴訟の取材を担当する。15~16年に『科学』(岩波書店)で「漂流する責任:原子力発電をめぐる力学を追う」を連載。
◇しずめ・さいじ  1973年生まれ、千葉県出身。96年立教大学卒、共同通信入社。佐賀支局などを経て2004年に科学部。原子力や地震防災、福島事故をめぐる訴訟の取材を担当する。15~16年に『科学』(岩波書店)で「漂流する責任:原子力発電をめぐる力学を追う」を連載。

鎮目宰司(共同通信科学部記者)

 

日本の原子力規制行政は、東京電力福島第1原発事故の本質を正面から反省し、教訓としようと真剣に考えているのだろうか。

 

 事故前から大津波の危険は各方面で指摘されていた。原子力安全・保安院も東電も認識してはいたが、対策には踏み切らなかった。規制当局が電力会社の不利益になるような判断をするには、裁判で争っても負けないだけの確証を必要とした。

 

 事故後、保安院などを解体して発足した原子力規制委員会に、国民は「安全以外の何も優先しない」姿勢を貫くことを期待した。だが、本質的な問題点は解消しきってはいないように思える。事故やトラブルが起きると、慌てて傷口にばんそうこうを貼るような弥縫策(びほうさく)を繰り返すという不幸な歴史の延長上にある。

福島第1原発に向かって来襲し、高さ10メートルの堤防を乗り越えた津波。5号機南側ののり面から東京電力社員が撮影した=2011年3月11日午後撮影(東電提供)
福島第1原発に向かって来襲し、高さ10メートルの堤防を乗り越えた津波。5号機南側ののり面から東京電力社員が撮影した=2011年3月11日午後撮影(東電提供)

 

 2011年3月11日、福島第1原発を襲った大津波は原子炉建屋がある海抜10メートルの敷地を上回り、原子炉の冷却機能が失われ事故に至った。だが、地震学者らは大津波の危険性を指摘していた。

 

 02年、政府の地震調査委員会は東北地方の太平洋岸全域で巨大な津波が起こりうるとの「長期評価」を公表。04年スマトラ沖地震で巨大津波が発生し、日本でも、平安時代の869年に現在の宮城県などを襲った大津波「貞観(じょうがん)津波」の調査研究が急速に進んでいった。

 

 貞観津波の痕跡は福島県内でも見つかっていたが、原発を停止して防潮堤を築くなどの対策に踏み切るには相当の覚悟がいる。東電は株主から、保安院は東電から、訴訟を起こされたとしても耐えられるような強力な根拠が必要だった。

 

 規制側は常に電力会社から訴訟を提起されるリスクを念頭に置いている。電力会社の不利益につながる判断をするには、裁判で争っても負けないだけの理論武装が必要となる。それには、学界の誰もが認めるような成熟(定説化)した知見を用いて審査するのが無難だ。「一部の学説にすぎない」と反論されないだけの権威が、行政組織と官僚の「安全」を守るためには必要なのだ。

 

 大津波の危険を疑わせる証拠は整い始めていたが、原発の安全を最優先して経済的な、あるいは政治的なリスクを冒すまでには至らなかった。それが福島事故を防げなかった主因ではないか。

 

 ◇後退する証言

 

 事故後、規制行政は「なぜ事故を防げなかったのか」という本質を正面から反省しようとしているのか。

 

 6月末、原発事故の刑事責任を追及する公判が始まった。東電の経営陣だった3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴されたが、国側の関係者は全員不起訴となった。一方、現在係争中の福島事故をめぐる民事訴訟では、「勝てばいい」との国側の姿勢も見え隠れしている。

 

 4月下旬の横浜地裁。福島事故で避難を強いられている住民が国と東電に損害賠償を求めた訴訟で、福島第1原発の安全審査を旧保安院で担当した原子力規制庁職員、名倉繁樹氏の証人尋問が行われた。焦点は事故直後の11年9月に政府の事故調査委員会が作成した名倉氏の聴取結果書、いわゆる「調書」の内容だった。

 

 名倉氏の調書には、各地の原発で耐震安全性確認を進めていた09年、東電から津波対策についてヒアリングした様子などが記されている。東電が示した試算では津波の高さは最大で海抜8メートル程度。原子炉建屋のある10メートルの敷地には及ばないものの、重要な非常用ポンプがあった4メートルの敷地は水没してしまう。

 

「具体的な対応を検討した方がよい」「(非常用ポンプなどの)重要施設を建屋内に入れたらどうか」などと求めた名倉氏を、東電側は「(保安院が原子)炉を止めることができるんですか」と一蹴したとの生々しいエピソードも語られている。

 

 原告側が国や東電の不作為を立証するのが尋問の狙いだった。そんな原告側の思惑とは裏腹に、名倉氏は法廷で事故調調書の内容を否定した。聴取内容は正確に記録されているが、名倉氏は誤った記憶に基づいて説明していたというのだ。なぜ誤りといえるのかについて、名倉氏は「(その後、)刑事訴訟で検察から調書を取られた際に、当時の資料を確認しながら状況を思い起こした」「(事故直後の事故調の聴取には)整理されていない記憶でしゃべってしまった」と述べた。

 

 尋問の前提を否定され、肩透かしを食らった原告側の弁護士は閉廷後、報道陣の取材に応じ、証言内容への不信感をにじませた。原発をめぐる国相手の訴訟では、珍しいことではない。保安院や原子力安全委員会出身者が多くを占める原子力規制庁では、福島事故をめぐる訴訟を意識した入念な準備や駆け引きが行われていたようだ。ある保安院OBは「原告側の追及を根本から覆すのが常とう手段。出はなからくじかれたらもう何もできなくなる」と話す。

 

 ◇「新知見」で現状追認

 

 福島事故で明らかになったのは、「研究や調査で明らかになった成果(新知見)が直ちに規制に反映されるとは限らない」という実態だ。事故後に発足した原子力規制委員会は、「新知見をどのタイミングで規制に反映させるのか」という問題にどう向き合ってきたのか。

川内原発敷地内の断層の露頭を調査する島崎委員長代理(右)=鹿児島県薩摩川内市で2014年4月3日
川内原発敷地内の断層の露頭を調査する島崎委員長代理(右)=鹿児島県薩摩川内市で2014年4月3日

 最も問題となったのは、火山の巨大噴火だ。日本の火山は、1万年に1回程度の頻度で巨大噴火(カルデラ噴火)を起こしてきたとされる。九州電力川内原発(鹿児島県)や北海道電力泊原発は、過去の巨大噴火で敷地に火砕流が到達した可能性が高い。一方で、前兆をとらえて巨大噴火を予測することは至難の業だ。

 

 事故後に規制委が定めた審査基準「火山影響評価ガイド」は、火砕流など工学的に防止できない災害リスクが「十分小さい」と評価できれば原発の設置を禁じないとした。結果的に規制委は、九電が示した海外の新しい研究論文を根拠として「巨大噴火の危険性は低い」と認め、九電による火山監視を条件に川内原発は基準適合とされた。論文では、巨大噴火の前兆は事前に観測で捕捉できるとする。

 

 審査合格後の14年11月、日本火山学会の委員会は、規制委に噴火予測の限界や曖昧さを踏まえて基準を見直すよう求める趣旨の提言を公表。規制委の田中俊一委員長は記者会見で「夜も寝ないで観測をして、国民のために頑張ってもらわないと困るんだよ」などと猛反発した。

 

 16年の熊本地震をめぐっては対照的な事態が起きた。元規制委員の島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)が、在任中に手がけた一部の原発の審査で、基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を過小評価していたと問題提起。島崎氏は、用いた計算手法の欠陥が熊本地震で証明されたと指摘し、規制委に見直しを求めた。田中委員長はいったん指摘を考慮する構えを見せたが、「専門家の間で知見が固まっていない」と島崎氏の提案を拒否した。

 

 火山の事例では、規制委が巨大噴火の前兆を捕捉できるとの「新知見」を採用したことに、火山学者から「知見が十分ではない」との批判が挙がった。地震動の事例では、計算手法の欠陥で過小評価していたという地震学者の「新知見」を規制委が「不十分だ」と退けた。二つの事例は対照的ではあるが、基本的には現状を追認するという点が共通する。

 

 火山を理由に川内原発の立地不適格を判断したり、地震動を理由に審査のやり直しや「基準適合」の撤回に踏み切ったりすることは、規制行政側にとって大きな負担になる。新たな知見が本当に正しいかどうかを判断するには、科学的な検証を十二分に積み重ねる必要がある。

 

 だが、定説となった知見のみを原発規制に用いることは、福島事故で確証が得られるまで津波対策を先送りした反省とは相いれない。事故の前後で何が変わり、変わらなかったのか。常に問われるのはそれだ。

(鎮目宰司・共同通信科学部記者)

目次:2017年7月18日号

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ここから買う株2万円

18 金利上昇で見直される金融株 日米欧中の好況感そろい踏み ■松本 惇

21 インタビュー キャシー・松井 ゴールドマン・サックス証券 「海外投資家が日本株買いに」

22 自動車、金融株が上昇へ 米経済の後退リスクは低い ■阪上 亮太

24 割安な日本株 中間決算発表で2万2000円も ■井出 真吾

26 円高でも株高 海外投資家呼び込む要因に ■柏原 延行

  狙い目のテーマはこれだ!

28 (1)変わるインバウンド 化粧品や「コト消費」へ ■香川 睦

29 (2)人手不足、働き方改革 産業用ロボットや人材派遣 ■編集部

30 (3)低ROE銘柄 企業統治改革で収益向上に期待 ■糸島 孝俊

32 (4)収益構造 魅力の内需・ディフェンシブ銘柄 ■大川 智宏

34 (5)東証1部昇格へ 新興市場で好調な10銘柄 ■藤本 誠之

35 実は出遅れていない日経平均 ドル建ては17年ぶり高値圏 ■三浦 豊

37 懸念材料 米国株に急落の兆し ITバブル並みに割高 ■菊池 真

38      日経のPERに問題あり

 

エコノミスト・リポート

98 中東の地政学 カタール独自外交のあつれき サウジなどとの「因縁」 ■広瀬 真司

100 カタール 出稼ぎ労働者が人口の9割

 

Flash!

11 銀座の路線価はバブル超え/長崎の地銀再編が難航/高格付けでAIIBのジレンマ/ソニーがアナログレコード自社生産

15 ひと&こと 東電が経産取締役に戦々恐々/アサヒグループHDの次期社長候補/医学会の会長交代

 

Interview

4 2017年の経営者 根元 浩幸 クレスコ社長

82 問答有用 大江 千里 ジャズピアニスト

 「いつも自分の人生のページをめくっていたい」

 

企業スポーツを見に行こう! 都市対抗野球開催

42 一体感で生産性も向上 部員の特別扱いは減る ■酒井 雅浩

47 広告塔の価値 少ない費用で継続がカギ ■武藤 泰明

49 岐路に立つ東芝野球部 ■酒井 雅浩

50 「ただ乗り」 日本の特殊性の危うさ ■佐々木 勝

52 新たな可能性 人材確保や製品売り込みのツール ■桂田 隆行/編集部

54 インタビュー 久保 恭久 日産野球部最後の監督 「費用に見合う価値を探せ」

        どうなる? 日産傘下の三菱自

55 都市対抗野球企画

 

90 金 非常にまれなトリプル高 ■池水 雄一

92 パンダ 中国は一帯一路や欧州外交に利用 ■中川 美帆

95 英国 四面楚歌の英国EU離脱交渉 ■増谷 栄一

 

World Watch

70 ワシントンDC 求められるインフラの姿 ■安井 真紀

71 中国視窓 動揺する台湾の独立派 ■金子 秀敏

72 N.Y./シリコンバレー/スウェーデン

73 韓国/インド/マレーシア

74 台湾/ブラジル/南アフリカ

75 論壇・論調 FRBの引き締め路線に批判相次ぐ ■岩田 太郎

 

Viewpoint

3 闘論席 ■古賀 茂明

17 グローバルマネー 相次ぐ中央銀行のミス・コミュニケーション

40 海外企業を買う(148) 中国神華能源 ■富岡 浩司

69 言言語語

76 アディオスジャパン(60) ■真山 仁

78 名門高校の校風と人脈(248) 清水谷高校/港高校(大阪府) ■猪熊 建夫

80 学者が斬る 視点争点 地域再生の鍵はネットワーク ■江頭 進

86 東奔政走 ニクソンに似る安倍首相の「機会主義」 ■山田 孝男

88 福島後の未来をつくる(50) 原子力行政の変わらぬ本質 ■鎮目 宰司

101 商社の深層(76) 財務や事業方針問われた株主総会 ■編集部

108 景気観測 日銀の買いパワー増すTOPIX ■上野 泰也

110 ネットメディアの視点 フェイクニュースを見破る ■土屋 直也

112 アートな時間 映画 [十年]

113        舞台 [納涼歌舞伎 修善寺物語]

114 ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ経済英語 “ Natural Unemployment Rate ”

 

Market

102 向こう2週間の材料/今週のポイント

103 東京市場 ■三宅 一弘/NY市場 ■堀古 英司/週間マーケット

104 インド株/為替/穀物/長期金利

105 マーケット指標

106 経済データ

 

書評

64 『よみがえる金融』

  『日産の創業者 鮎川義介』

66 話題の本/週間ランキング

67 読書日記 ■孫崎 享

68 歴史書の棚/出版業界事情

 

63 次号予告/編集後記

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