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【マイナス金利】日欧の相違 無理をすれば、カネ回り悪化のリスクも 2016年2月16日号

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ECBと日銀の金融政策比較

◇量的緩和との両立が難しい日銀

 

山口曜一郎

(三井住友銀行ヘッド・オブ・リサーチ)

 

 マイナス金利の「先輩」欧州中央銀行と比べ、日本では目標達成は困難だ。それを乗り越えるために、日銀は国債購入に積極的に高い価格を提示する必要が出てくるかもしれない。

  マイナス金利導入を決めた日銀は、資産購入による量的緩和(QE)とマイナス金利を併用する中央銀行となった。先輩には欧州中央銀行(ECB)がいる。両中央銀行の金融政策の特徴を3点に絞って比較しながら、日銀の三次元緩和がワークするかを考えてみたい。

  一つめはマイナス金利導入の経緯の違いだ。ユーロ圏では、最初にマイナス金利が導入され、それから国債購入によるQEが実施された。振り返ると、2013年に入ってから、ユーロ危機時に民間金融機関がECBから借りた3年物LTRO(長期資金供給オペレーション)の早期返済が始まると、ユーロ圏内の過剰流動性が減少し始め、金融緩和効果が低減していった。その中で、国債購入によるQEの必要性を説く声が徐々に高まっていったのだが、ECBの理事会内では反対派が根強かったため、十分な支持を得られず、14年6月にマイナス金利が導入された(表)。

  その後、同年12月の消費者物価指数(HICP)が前年比0.2%減とマイナス領域に急低下すると、理事会内の懸念が急速に高まり、15年1月にECBはPSPP(公的セクター債券購入プログラム)の導入を決定、同年3月から購入を開始した。

  一方の日銀は、13年4月にまず量的・質的緩和(QQE)を導入し、今回マイナス0.1%のマイナス金利を決めた。つまり順番が逆である(表)。QQEに限界が来たからマイナス金利に移行したと受け止められかねないし、そうした側面は否めない。ただし、インフレ実現のために長期戦を覚悟した結果のマイナス金利導入と考えれば、今回の金利政策への回帰は相応にリーズナブルだったと言える。

  二つめはマイナス金利の適用範囲の違いだ。ユーロ圏では超過準備の全額にマイナス金利が適用される。1月末時点の超過準備は約6644億ユーロであり、マイナス金利がマイナス0.1%進むたびに銀行の負担は6.6億ユーロ(約865億円)増えるが、もしも日銀が現在221.8兆円の超過準備全額にマイナス0.1%のマイナス金利を適用すると、銀行の負担は約2218億円だ。今まで日銀当座預金の金利である付利が0.1%だったことを勘案すると、インパクトはその倍の4436億円と膨大な額になる。

  そのため、日銀は今回のような3段階の階層構造を導入した。政策金利残高がどう推移するか、マクロ加算残高をどう調整するか、などによって銀行の負担は変わるが、付利の0.1%からマイナス0.1%へのインパクトは、すべてをマイナス金利にすることから比べれば随分と抑制されたものになりそうだ(日本経済研究センターは今回のマイナス金利導入によるインパクトは2000億円程度と試算している)。………

 

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この記事の掲載号

定価:620円(税込み)

発売日:2016年2月8日

週刊エコノミスト 2016年2月16日号

 

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