◇「割安」「割高」でポジション調整 リスクプレミアムで投資を判断
中桐 啓貴
(ガイア社長)
投資に資産価格の変動は付き物だが、特に年初からの荒れ模様の市場を目の当たりにして、気持ちが落ち着かない人も少なくないだろう。ただし、急激な相場の変動によって、時に安すぎる価格まで売られすぎたり、高すぎる価格まで買われすぎたりすることがままある。保有する資産ポートフォリオ(組み合わせ)の中で、割安となった資産を買い増し、割高な資産を一部売却することで、将来のリターンをさらに高くすることも可能だ。では、どのように「割安」「割高」を判断すればいいか。その目安の一つとして「リスクプレミアム」の変動を見る方法がある。
図1はTOPIX(東証株価指数)の過去10年間の値動きだ。今年に入ってから下落も目立つ。それでは現在、TOPIXは割高なのだろうか、それとも割安なのだろうか。実は、指数の値動きだけを見ていても、割安か割高かの判断は難しい。それを見極めるには、まず「バリュエーション」(投資価値評価)の考え方を知る必要がある。指数の値動きだけを追ってタイミングを計っていると、相場の下げが続く局面では「まだ下がるかもしれない」と考えていつまでも買い増せなかったり、相場の上げの局面では「まだ上がるかもしれない」と考えて売ることができなくなったりする。
◇「1σ」を目安に
バリュエーションを測る指標の一つに、PER(株価収益率)があり、「株価÷1株当たり純利益」で計算する。投資に際して重要なのは、投資する企業がどれほどの利益を稼ぎ出せるかであり、その利益の一部は配当といった形で株主に還元される。この企業の利益の見通しは、全体として見れば短期間で大きく変動することは少ないが、株価はさまざまな思惑で短期間に急激に変化する。つまり、1株当たり純利益が変わらないのに株価が大きく上がったとすれば、PERは上昇して「割高」となり、株価が大きく下がればPERも下がって「割安」となる。
投資に当たって他の資産の利回りと相対的に比較できるよう、PERを逆数にしたものが「株式益回り」(=1÷PER)で、PERが高いほど株式益回りは小さくなって「割高」となる(図2)。ただし、この株式益回りの水準も、その時々の日本国債など安全とされる資産の利回りと相対的に比較しなければ、長期的な評価は難しい。そこで、株式などリスク性の高い資産の利回りから、安全資産の利回りを差し引いたものが「リスクプレミアム」と呼ばれる指標だ。ここでは、...
この記事の掲載号
定価:620円(税込み)
発売日:2016年2月1日