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【ネットスーパー戦国時代】配送料負担大きい消耗戦 2016年2月23日特大号

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◇低い収益率

 

花谷美枝(編集部)

 

 食品や日用品をインターネット上で注文を受け、自宅に配送するネットスーパーの市場が拡大している。イトーヨーカ堂(セブン&アイ・ホールディングス)、イオン、西友(米ウォルマート)などの総合スーパーが拡充を進めており、富士経済の予想では市場規模は2015年には1000億円を突破したと見られている。

 ネットスーパーは、パソコンまたはスマートフォンの専用サイトから商品を注文し、自宅や指定の場所で受け取るサービス。商品価格は基本的に店頭価格と同じで、即日配送にも対応する。

 働く女性を中心に利用が増えており、各社は対応を強化している。イトーヨーカ堂の15年2月期のネットスーパーの売上高は約500億円。西友のオンラインショッピングサイト「SEIYUドットコム」はサイト開設の13年6月から売上高・会員数ともに3倍になった。「今後3年間で売り上げ・会員数ともに現在の2倍にする」(西友ドットコム事業本部ディマンド・クリエーションの野村佳史シニア・ダイレクター)見込みという。

 

 日本チェーンストア協会によると、15年のスーパーの売上高の合計は13兆1682億円。前年比で微増したものの、低価格専門店やコンビニとの競合、消費者の節約志向などにより、スーパー市場は低迷が続いている。ネットスーパーは市場全体から見ればわずかな規模ではあるが、顧客をつなぎとめるための手段の一つとして重視されている。

 しかし、流通業に詳しいJMR生活総合研究所の大澤博一取締役は「ビジネスとしては頭打ちの感が出てきた」と指摘する。配送費や店舗内での作業に当たる人件費の負担が大きく、各社は収益の確保に苦戦しているからだ。イトーヨーカ堂はネットスーパー事業で黒字化していると発表しているが、人件費も含めれば収益の確保はぎりぎりと見られている。

 各社は一定金額以上の購入者には配送料を無料にしている。利用者の大半が送料無料の金額を超えて買い物するといわれており、実質的にスーパー側が送料を負担している。

 配送は通常、協力業者と呼ばれる地域の配送業者に委託する。配送料の相場は1件当たり300円程度といわれている。スーパーの粗利率は一般的に2~3割程度なので、そこから配送料の負担を差し引くと、利益率はさらに下がる。特に「日用品や食品は、酒類や書籍などに比べて利幅が小さい」(流通経済研究所の石川友博主任研究員)ともいわれているだけに事業としては厳しい。収益率の低さから早々と撤退する例も出てきた。住友商事傘下のサミットは、14年10月にネットスーパー事業から撤退している。

 

◇倉庫一体型で効率化

 

 日本におけるネットスーパーは00年に西友が開始し、総合大手スーパーが追随した。00年は米アマゾンが日本のネット通販市場(EC)に参入した年でもある。前出の大澤氏は、米アマゾンなどECの拡大に顧客を奪われることを意識して、事業拡大を急いできたと分析する。

 総合スーパー各社は、効率化によるネットスーパーの収益確保を模索している。


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