◇都市ガス自由化で攻守逆転
◇2.4兆円市場狙う電力会社
(編集部)
電力自由化の後にはガスの自由化が控えている。2017年4月には、家庭向けの都市ガスの小売りが自由化され、今は攻めているガス会社が一転、守勢に立たされる。
東京ガスの広瀬道明社長は「当社よりも規模の大きな企業が参入してくる。電力会社が本気で攻めてきたら、2~3割の顧客を奪われてしまうだろう」と危機感を隠さない。
国内の家庭向けガス市場は約2・4兆円とされる。家庭向けの電力市場8兆円と合わせると10兆円規模に達する。ガス自由化後はこの巨大市場をめぐって電力、ガス入り乱れて顧客獲得競争が展開される。
◇セット販売の威力
東京電力の佐藤梨江子執行役員は「ガス小売り事業は電力自由化で奪われる顧客を取り返すための柱の一つ。ガス自由化後には電力とガスのセット販売を始める」と強調。関西電力の弥園豊一常務も「ガス小売り事業への参入は、エネルギー企業としての当社の責務と言ってよい」と話すなど、大手電力会社はすでにガス事業への参入に意欲を示す。
電力とガス業界はこれまでも競争関係にあった。電力会社はオール電化製品などで一時は攻勢をかけ、福島原発事故後はガスが見直された。だが、今回の争いは次元が違う。電力会社はすでに巨大なガス輸入業者だ。液化天然ガス(LNG)火力発電のため世界市場からガスを調達し、貯蔵タンクも持っている。本気になれば発電用と販売用のガスを合わせて大量に買い付け、価格勝負に出ることもできる。
経済産業省の有識者会議では、ガス自由化に向けた制度設計の議論が進んでいる。焦点となっているのは、………
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この記事の掲載号
定価:620円(税込み)
発売日:2016年2月22日