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【世界を変えるIoT】ドイツ最新事情 2016年3月15日号

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◇多品種少量生産へのものづくり革命

◇デジタル工場、無線通信で効率化

 

長島聡(ローランド・ベルガー社長)

 

 ドイツのものづくりの変革は、単なる生産の効率化ではない。多品種少量生産により、顧客のニーズにぴったりのものを素早く届けるという壮大な取り組みだ。
 設備投資産業である自動車業界では、工場における投資コストの最小化や早期立ち上げが至上命題である。それに対する自動車メーカーBMWの答えは、工程を事前に予測する「デジタル工場」だ。

  まず工場を新設する前に、3Dシミュレーションで架空の工場を建設、施工時や稼働時のシミュレーションを行い、工場の施工に入る前に課題とその対策を洗い 出す。例えば、設備点検の際に検査員が通る通路の幅など、設計段階で気づきにくい点も、工場内の人の動線を綿密にシミュレーションすることで事前に 解決可能だ。また、生産ラインの組み替えなど、今まで人力で行っていた作業の自動化を進めた。
 シミュレーションにより同社は、建設中における不具合や手戻り(作業工程のやり直し)をなくし、工程替えや保全コストの最小化を実現、建設工程を短縮化している。
  もう一つ特徴的なのが、人と協調して動くインタラクティブ・ロボットである。従来の自動車工場では、ロボットや人が行う生産ラインは別々だった。インタラ クティブ・ロボットは多数のセンサーで人間の動きを把握し、あたかも人間と声を掛け合っているかのように、息の合った仕事を進められる。例えばドアの加工 では、ロボットが機械的な正確さや強い圧力が求められる加工や運搬を行いつつ、隣で人間が細部を仕上げるといった協業である。これにより、生産ラインが短 縮されスペース効率が向上する。


◇生産効率25%改善

 自動車や建機の部品メーカーである独ボッシュのソリューションは、人やモノがネットワークでつながる「スマート工場」だ。2013年に最新の多品種生産ラインが建機用の油圧機械製造ラインに導入された。
  従業員には個人を識別するタグを装着してもらい、製造途中の部品を運ぶ台車には「RFID」というタグが仕込まれ、人やモノが無線でネットワークに接続 し、作業工程に応じてリアルタイムに動作が記録される。ラインの正面には大型モニターが設置され、全体の進捗(しんちょく)が一目瞭然だ。
 一 方、従業員は持ち場の小型モニターに表示された標準作業の動画を見ながら作業できる。工程に応じて必要な部品はLEDの点灯で知らせ、取り付けの誤りを防 ぐ。また、タクトタイム(作業時間)通りに進まないなど、異変を感知すると管理者へ自動的に通報するなど、さまざまな工夫がある。
 こうした工場の「スマート化」により、ボッシュは組立工程のスムーズな流れを維持したうえで作業効率を改善させた。特に建機は車以上に種類が多く、小ロットの生産となることが一般的だが、6~7種類の製品を一つのラインで組み立てることに成功した。
 エラーの削減でも大きな効果を得た。不良品率は、10年では100万分の207だったが、15年には100万分の75に改善した。20年には100万分の5~40を目指すという。また、15年のコストは10年比で14%削減され、生産効率は同25%向上した。


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