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Q&A:矛盾してないか、中国の通貨政策 2016年3月15日号

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◇切り下げの一方で元買い介入

 

城田 修司

(HSBC証券マクロ経済戦略部長)

 

Q1 新年の世界同時株安は、中国の人民元安がきっかけだったと言われるが、どういう因果関係なのか? 

 

A 中国株が最初に急落したのは2015年6月で、この時は人民元とは直接関係が薄かった。経過を振り返ってみると、上海総合株価指数は14年後半に2000ポイント付近で底打ち後、急速に上昇して15年6月には節目の5000ポイントを超えた。この時期には中国人民銀行(中央銀行)が利下げを開始し(14年11月)、矢継ぎ早に大幅利下げを行っている。すなわち、当時の急激な株価上昇は期待先行の典型的な金融相場だったと言える。

 その後、15年半ばに急浮上した景気失速懸念などをきっかけに、割高感が修正される形で株価は急落。中国政府は同年7月に相次いで株価下支え策を打ち出したが、これが効かないとの認識が広がり、株安が一段と進んだ。こうしたなかで、中国人民銀行は8月11日、「人民元の対ドル為替レート基準値の報告方法を改善することに関する声明」を公表した。

 時系列でみると、この時の株価下落は人民元切り下げ以前に発生している。今年初めの株安・人民元安は同時に発生したが、人民元の下落が10日程度の短期間で終わったのに対し、株価の下落は長引いており、下落が続いた期間は異なる。

 中国の株式市場は売買代金の約8割を中国国内の個人投資家が占める特殊な構造だ。機関投資家の存在感が薄く、株価が一方向に振れやすい。外国人投資家の参入が制限されており、海外市場からは分断されているため、本来であれば株価と人民元相場(あるいは海外株価)の変動に直接的な因果関係はないはずだ。

 それでも、昨年8月の為替制度改革で人民元の対ドル為替レート基準値が切り下げられたことは、中国の株式市場をはじめ国際金融市場に大きなショックを与えた。人民元の下げ幅が大きくなれば、資産価値の保全を狙って中国国外に資産を持ち出す「悪い資本流出」が加速する恐れがあるためだ。また、後述するように人民元切り下げ前から先進国の民間銀行は中国への信用供与を絞り始めていた。人民元の一段安は、海外からの投資マネー(銀行貸し出しなど)の引き揚げを加速させ、ひいては中国景気のさらなる減速や企業収益の悪化を招く恐れがある。こうした市場期待(極端な悲観論)が、国内個人投資家がほとんどを占めるという中国の特殊な株式市場のなかで増幅され、株価下落に拍車をかけた。


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