◇意外と少ない単体の従業員数
◇「社内出向」で他業務の経験積む
新井徹
(『商社レポート』編集長)
全世界で多彩な事業を展開し、年1000億円を超える純利益を稼ぎ出す総合商社。そんなイメージが定着していることから、総合商社はかなりの規模の大企業なのでは……と考えがちだ。しかし人数から見ると、意外なほどその規模は小さい。単体ベースの従業員数(2015年3月末時点)は、最大の三菱商事が6322人で、次ぐ三井物産も6085人。現在、連結純利益で総合商社トップを走る伊藤忠商事は4262人にすぎない(図1)。
とは言え、連結ベースの従業員数を見ると“大企業”のイメージがさほど間違いではないことも分かる。最多の伊藤忠が11万487人、次に多い住友商事は7万5448人、3番手の三菱も7万1994人を擁する。一方、三井は、豊田通商の5万3241人より少ない4万7118人にとどまり、大きな開きが生じている。
連結従業員数のバラつきは、どこから生じているのか。それは、従業員数が多い連結子会社を擁しているかどうかの違いだ。伊藤忠などは、複数の上場子会社を含むグループ企業群を形成している。だが三井は、一定の株式を保有する大型の関係会社や合弁会社の数は多いものの、多数の従業員を擁する連結子会社が比較的少ない。逆に豊通は、世界各地で自動車関連の製造・サービス業を営む子会社などが多く活動しており、こうした企業・事業群が連結従業員数の規模を膨らませている。
従業員数の状況から推測できるように、現在の総合商社の業態は「単体」をコアとし、世界各地の子会社や関係会社を通じて、連結ベースで収益を上げる形になっている。しかし、新卒採用を連結ベースで行っているわけではなく、グループ一括採用などもしていない。総合商社への就活はあくまで“単体”との関係で行うことになる。採用数も多くはなく、上位5商社の最近の新卒総合職採用実績は毎年100~150人程度だ(図2)。
◇高い給与、低い離職率
この採用数は、どういう根拠で決まっているのだろうか。00年以降の上位5商社の採用実績(4月入社人数)を見ると、三菱は100~195人、三井は90~137人、伊藤忠は45~139人、住商は73~153人、丸紅は29~148人となっている。三菱や三井は、1990年代初めに200人を超える採用を行った時期もあったが、現在、在籍している従業員が入社した80年代以降は、おおむね100~150人の採用数で推移している。