冨田和成(ZUU代表取締役社長)
とみた・かずまさ◇1982年生まれ。野村証券で資産10億円以上の富裕層を対象に資産運用コンサルティングに従事後、シンガポールへ駐在、ビジネススクール留学を経て2013年にZUUを創業。著書に『鬼速PDCA』など。
人生を前進させるための「ガソリン」である「お金」に関するリテラシーを身につけることで、夢や目標に向かって全力でチャレンジする人を増やしたい──。そんな思いから、2013年に金融メディア『ZUU online』を立ち上げました。現在、月間の訪問者は350万人超です。金融領域の情報サービスには、マーケット情報に寄ったものが少なくありませんが、「お金に関する問題解決型メディア」として独特のポジションを築くことができたのではと考えています。
ここに至るまでの運営方針を振り返ると、三つに分類できると思います。
初期はキーワード検索をきっかけに認知度を高めるため、賞味期限が長いと考えられる記事を地道に制作し配信しました。中期は、当時全盛期だった大手ニュースサイトやアプリを想定し、外部チャンネルごとに最適なコンテンツを配信するなど鮮度と話題性を備えた記事の配信にシフトしました。一定割合のファン層がついた現在は、潜在ユーザーの定着を図るべく、本来のテーマである「お金」に関するストック型のコンテンツの配信を増やしています。
こうした変遷を経た私たちが、以前から変わらずユーザーに促したいと考えていることは、お金に関する行動において、感情に左右されて決断するのではなく、人生の目標から逆算した合理的な選択と判断に基づいて動くことです。
そこでユーザーが決断に至る前のステップを三つ──メディアで情報に触れる、理解を深める、自分の状況に応じて解を選択する──に分類、それぞれに即した記事を配信しています。
三つのステップに合わせた“垂直統合型”記事を備えたバーティカル(専門特化型)メディアであるZUU onlineには、日々お金に関する情報が蓄積されています。アクセス解析やユーザー属性データを通じて、ユーザーごとの課題に合わせてピンポイントで情報提供ができる配信ロジックを実現できるよう、日々改善しています。
◇想定外の金融プロ読者
過去、自身がプライベートバンク業務に従事し、メディア運営者になった今だから思うのが、金融のプロも顧客課題を深掘りし、解決策を出し、実行を支援する意味では情報と商品の媒介者、つまりメディア的な存在だということです。ユーザーの行動データとお金の問題解決につながる情報を多く持つ我々は、最強の金融コンサルティングができる存在を目指しています。
また、これは立ち上げ当初から意図していたわけでないですが、専門性のレベルを少し高めに設定してきた結果として、プロ側に当たる金融業界の方々が読者全体の15%程度を占めるようになりました。金融業界側のコンサルティングレベル底上げにも貢献することができたら、巡り巡って、金融パーソンの先にいる顧客への価値が上がるわけですから、プロが読んでも読み応えのある情報まで意識して企画・制作し、配信しています。
ZUU onlineを基点とした多チャンネル化も模索中です。現時点で形になっているのがTV局とのコンテンツ連携やラジオ局との共同番組制作、地方新聞社とのマネー紙出版などです。さらに、2年前にシンガポール版を立ち上げ、日本企業として初めて現地の主要大手ポータルサイトと連携するなど認知度も高まってきました。
今後も「お金」に関するリテラシーを身につけ、夢や目標に向かって全力でチャレンジする人を増やすための活動に尽力していきます。
*週刊エコノミスト2018年3月13日号「ネットメディアの視点」